ゴードンと香水

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むかしスコットランドに、ゴードンという貴族がいたんだそうですね。アレグザンダー・ゴードン。第四代ゴードン公爵であります。1743年に、スコットランドに生まれています。
アレグザンダー・ゴードンの趣味は、狩猟。それで、愛犬を狩猟向きに躾けをして。これが今の、「ゴードン・セッター」だといわれています。1800年頃のこと。セッター、つまり「伏せ!」の姿勢が保てるように訓練したので、「ゴードン・セッター」。
ゴードン Gordon はスコットランドには珍しくはない姓のようですね。たとえば、アレグザンダー・ゴードン。これは、同名異人のようですが。公爵ではないほうの、アレグザンダー・ゴードン。アレグザンダー・ゴードンは、1769年に、特別製のジンを醸造。これが「ゴードン・ジン」のはじまりだと伝えられています。
アレグザンダー・ゴードンは1769年に、多くのハーブを抽出することを考えて。つまり最初の「ゴードン・ジン」は薬酒のひとつだったのです。これらの薬草のなかでも特に大切だったのが、ジュニパーベリー。当時はジュニパーベリーには少なからぬ薬効があると信じられていたのです。薬効はさておき、ジュニパーベリーがたくさん効いているほど、美味しいジンになる、そうも言えるでしょうね。
英國の作家、D・H・ロレンスもまた、「ジュニパーベリー・ジン」が大好きだった。そこで、自宅のバスタブで、自分好みの「ジュニパーベリー・ジン」を造って、友達にふるまったことがあるんだそうですね。
ジンが出てくるミステリに、『うぶな心が張り裂ける』があります。1958年に、クレイグ・ライスが発表した物語。

「あるいは午前二時から四時にかけて呷り続けた安物のジンのせいで、こんなに気分がよくないのだろうか。」

これは主人公で探偵の、ジョン・J・マローンのひとりごと。ジョン・J・マローンは三度の飯より酒が好きという設定になっています。『うぶな心が張り裂ける』にはこんな描写も出てきます。

「その香水のかおりがマローンの頭のなかで、ライやスコッチと危険な化合を始めた。」

要するにマローンは、美女の香水からウイスキーを想い浮かべた、ということなのでしょう。香水は記憶を運んでくるもの。いや、香水の最大の効用は記憶を想い起こさせるところにこそあるのです。

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