プディングとフリル

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プディングは美味しいものですよね。でも、プディングなのか、プリンなのか。プディングは、英語、プリンは日本語。とりあえず、そういって間違いではないでしょう。
英語でのプディングは1300年頃から使われているんだそうです。が、どうしてプディングなのか、よくは分かっていないんだとか。
一説に、ラテン語の「ボトゥルス」と関係があるとも。「ボトゥルス」は、今のソーセージに似た食べ物だったらしい。つまり、なにかを押し固めた形の食事を、「プディング」と呼んだのがはじまりのようですね。
たとえば、「ヨークシャー・プディング」などはれっきとした食事であります。
ですから、「カスタード・プディング」といえば、間違いなくお菓子のプリンの意味になったくれるでしょう。
ところで、夏目漱石はカスタード・プディングを食べたのかどうか。私は勝手に漱石も今いうプリンを食べたんだと想像しています。

「兄さん、其のプツヂングを妾に頂戴。好いでせう。」

漱石の『行人』の一節。「お重」が兄に言う科白なんですね。と、兄は素直にプディングの皿を「お重」に与えるんです。
漱石は胃弱でもありましたから、プディングは適切な食べ物でもあったでしょう。
それにしても『行人』は大正はじめの小説ですから、ずいぶんとハイカラな風景でもあったものと思われます。
プディングが出てくる小説に、『荒涼館』があります。もちろん英國の文豪、ディケンズの傑作。

「食事には上等の鱈、ロースト・ビーフ、カツレツ、プディングが出ました。」

この場合の「プディング」は食事なんでしょうか、デザートなんでしょうか。ちょっと悩むところではありますが。
『荒涼館』には、こんな描写も出てきます。

「洋服の胸もとと袖口に立派なシャツの飾りべりをのぞかせ、空色の上衣には輝くばかりのボタンを………………………」。

これは、レスタ卿の着こなし。「飾りべり」はたぶんフリルのことでしょう。
一度くらい、フリルのシャツを着て、プディングを食べに行きたいものではありませんか。

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