駒と金剛石

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駒は、駒子の駒ですよね。川端康成の名作『雪國』に出てくる女性。さぞかしお美しいお方だったんでしょうね。
駒はまた、将棋の駒でも。
🎵 吹けば飛ぶような将棋の駒に………………。
坂田三吉であります。
将棋がお好きだった文士に、井伏鱒二がいるんだそうです。ある時、井伏鱒二、池谷信三郎と将棋を指して。井伏鱒二の随筆『将棋』に出ている話なんですが。
井伏鱒二は、どこで池谷信三郎と将棋を指したのか。直木三十五の部屋で。昭和のはじめの頃。
その頃、直木三十五は新橋に仕事部屋があって。そこで、将棋を。つまり、ひとつの部屋に文士が三人いたわけです。
直木三十五は、小説を書いていて。直木三十五は着物で、正座して。正座した膝の上に原稿用紙を置いて、読めそうもないほど小さな文字を。それが、早い。早いけれども耳は井伏と池谷の会話を聴いている。
井伏と池谷は天丼を賭けて、将棋を。勝負がついた時、天丼の気分ではなくなっていて。「やーめた」と。それを横で聴いていた直木三十五が、叱る。
「男が一度、天丼と言ったなら、天丼を取るべきではないか」
井伏と池谷は食べたくもない天丼を食べたという。
駒は、また馬のことでも。
🎵 咲いた櫻になぜ駒つなぐ………………。
もともとは、子馬で。子馬が「こま」になって、駒の字を宛てるようになったんだとか。駒が出てくる小説に、『西の洋血潮の暴風』があります。櫻田百衛が、明治のはじめに書いた物語。

「塗革の靴をはき。六歳駒の手綱をしぼり。………………………」。

『西の洋血潮の暴風』には、こんな場面も出てきます。

「黑天鵞絨の外衣執て。背ろへ掻すて金剛石の。………………。」

とにかく明治のはじめですから、文字遣いが難しいのですが。要するに、シャツのボタンがダイヤモンドになっているという場面なんですね。
ダイヤモンドのスタッドではありませんが。ヴェルヴェットの上着には、憧れますね。

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