サイゴンとサングラス

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サイゴンは、今のホーチミン市のことですね。ヴィエトナムきっての都会であります。
サイゴンは長くフランス文化の影響受けてきた町でもあって、今なお、故き佳きフランスの薫りが感じられるほどに。
たとえば、サイゴン・コーヒー。サイゴンにはサイゴン特有のコーヒーが。

「ミキサーでほどよいあらさにひき、サイゴンで買ったアルミ製のフィルターを用いていれる。」

近藤紘一著『バンコクの妻と娘』にも、そのように出ています。これは、バンコクでの近藤紘一の自宅での様子。近藤紘一は、元「サンケイ新聞社」の記者だった人物。サイゴン特派員、バンコク特派員の経験があります。また、ヴィエトナム人の女性と結婚したお方でも。
「アルミ製のフィルター」と書いています。が、これはサイゴンの町の喫茶店でも同じ方式。「コーヒー!」と頼むと、カップの上にフィルターを乗せた状態で、持ってきてくれる。
もっとも戦前までの巴里でも、このフィルター方式のコーヒーが一般的だったという。もちろん、フィルター内のコーヒーがすっかりカップに落ちきったところで、静かに頂くわけですが。
近藤紘一の、ヴィエトナム人の奥様が、どうしても食べることができなかったのが、納豆と餅。まあ、納豆は分かるにしても。なぜ、餅が。彼女は、餅を口に入れると、その中で接着剤のように思われて、なんとも扱いに困ったそうです。まあ、国が変われば好みも変わるのでしょう。
サイゴンが出てくる小説に、『北の岬』があります。昭和四十一年に、辻 邦生が発表した物語。

「フランスの文明って何? それはサイゴンの町をフランス趣味にデザインして…………………。」

これはたまたま客船に乗り合わせた、修道女のアンドレの科白。また、『北の岬』には、こんな描写も出てきます。

「彼女は誰か顔見知りと話さないときは、いつも甲板の日かげに坐り、サン・グラスをかけ、本を読んでいた。」

これも修道女、マリー・テレーズの様子。
木陰のベンチで。サングラスをかけて、サイゴンについての本を読みたくなってきましたね。

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