フィリップとフェア・アイル

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フィリップは、わりあいよくある名前ですよね。むかし、フランスのオートクチュール・デザイナーに、フィリップ・ヴネがいましたが。どちといえば、フランスに多い名前かも知れませんね。
たとえば、フィリップ豪胆公だとか。フィリップ豪胆公は、中世、ブルゴーニュの王であった人物。1342年に、ブルゴーニュに生まれています。今から七百年以上も前のお方。でも、わりと知られているのは、『中世の秋』のおかげでしょうか。
『中世の秋』は、1919年に、ヨハン・ホイジンガが発表した歴史物。ヨハン・ホイジンガは、1872年に、オランダ、フロニンヘンに生まれています。
余談ではありますが。フロニンヘンもまた、美食の都なんだとか。この地には、「ポルト・ファン・クレーフェ」というホテルがあって。そのレストランで出すビーフステーキが名物。ここでステーキを頼むと、開業以来、何枚目のステーキであるかを、大声で教えてくれるんだとか。
ホイジンガの『中世の秋』を読んでいると。「ガロア・エ・ガロワーズ」の話が出てきます。ガロア・エ・ガロワーズは、当時の最新流行の若者たちのこと。

「かれらは、夏には、毛皮と裏つきの頭巾で暖かく身をつつみ、暖炉には火を燃やさなければならず、逆に、冬には、毛皮なしの上着一枚しか身につけなかったのである。」

暑いの寒いのは、言ってはいけなかったのでしょう。我慢大会。苦行。マゾ。でも、おしゃれというのは、行くところまで行くと、マゾに似てくるのかも知れませんが。
フィリップが出てくるミステリに、『毒を食らわば』があります。ドロシー・L・セイヤーズが、1930年に発表した物語。

「フィリップ・ボーイズはいつだって、自分ひとり犠牲になってるって顔したがっていた。」

フィリップ・ボーイズは、作家という設定になっています。また、『毒を食らわば』には、こんな描写も出てきます。

「赤い髪を突っ立てた青年が、何かチェロスロヴァキア風のものを、フェア・アイル・セーター姿で性別の判然としない、極めて体の柔らかい人物の奏でるヴァイオリン伴奏に合わせて弾いている。」

とあるピアニストの様子。少なくとも、フェア・アイル・スェーターであるが分かります。
さて、フェア・アイル・スェーターで、ホイジンガの初版本を探しに行くとしましょうか。

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