牡蠣とカシミア

Share on FacebookTweet about this on TwitterShare on Google+Email this to someone

牡蠣は、美味しいものですよね。英語なら、オイスター。「オイスター・バア」なんていうではありませんか。
ひと昔前は、「Rのつかない月に牡蠣食うな」などといったものです。
May、J un e、J uly、A ug ust。これらの月にはRがつかない。だから牡蠣は食べてはいけませんよ、と。これは牡蠣の産卵期と関係があったんだとか。もっとも今ではそんなことも言わなくなっていますが。
オイスターとファッションもまったく無関係ではなくて。「オイスター・ホワイト」の色名があります。よくレイン・コートの色あいを指して、「オイスター・ホワイト」と言ったりも。
フランスなら、「コキーユ」c oq u il l e でしょうか。ことに、生牡蠣。フランスでは、典型的な前菜。というよりも、コキーユではじめる食事には、おしゃれな印象がありますね。
ただ、ふつうの日本人には、量が多い。レストランに行って、「牡蠣!」と注文すると、「何ダース?」ということに。いちばん小さいのが半ダースだったりするので、参ってしまいます。少食な人なら牡蠣の前菜だけで、充分!と言いたくなってしまうほど。
1958年の巴里で、牡蠣を食べた人に、高峰秀子がいます。

「シャンゼリゼ、ジュイ・エ・ニュイへ夕食を食べにゆく。ムールもカキも美味しかった。」

高峰秀子著『ヨーロッパ二人三脚』、9月24日ところに、そのように出ています。
「二人三脚」は、ご主人の、松山善三とおふたりの意味であります。文中では、しばしば「Z」の頭文字ででも登場するのですが。

「藤田さんがクリスマス・プレゼントを持って来訪。Zはキイホルダー、私はエルメスのマフラーをもらった。」

12月27日の日記に、そんなふうに書いています。「藤田さん」って、誰だろうと思うと。これが、藤田嗣治だったりするのですから、驚くではありませんか。
しかも高峰秀子はどうかすると藤田嗣治のことを、「ヘチャプリ」なんて呼んだりもするんですから、ハラハラ、ドキドキ。
藤田嗣治のほかにも、今 日出海や梅原龍三郎なども、『ヨーロッパ二人三脚』には出てくるのですが。

「五時に又出かけて、善三まっしろなカシミヤのマフラー買い御きげん。」

1959年2月12日の、旅日記。この日、高峰秀子はバッグの色に合わせた靴を探して、無駄足を。
それにしても、純白の、カシミア、気になりますねえ。松山善三は、おしゃれなお方だったんですね。まあ、巴里のレストランで牡蠣を食べていると、おしゃれにもなりますがね。

Share on FacebookTweet about this on TwitterShare on Google+Email this to someone