シルクハットとシューバ

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シルクハットは、絹帽子のことですよね。どうして絹帽子なのか。絹地で作られた帽子なので。もう少し詳しく申しますと、シルク・プラッシュという生地を帽子の表面に張った帽子なのです。
シルク・プラッシュは、ちょっとビロードにも似ています。ビロードよりもさらに毛足の長い布地が、シルク・プラッシュなのです。
では、なぜシルク・プラッシュなのか。ビーヴァーの毛皮の代りとして。十九世紀中頃までのハイハットは、ビーヴァーの毛皮製だった。そのための乱獲でビーヴァーが絶滅危惧品種に。
逆に申しますと、そのくらいにビーヴァー・ハットが流行ったわけですが。
それでビーヴァーがいなくなったので、その毛皮の代用品として、シルク・プラッシュが用いられるように。
ビーヴァー・ハットとシルクハットの違い。ビーヴァー・ハットは水に強い帽子。シルクハットは水に弱い帽子。当時の紳士が常に傘を持つようになったのは、シルクハットのためだったのですね。

「彼の頭には明日の日の丸が映つた。外を乗り回す人の絹帽子の光が見えた。」

夏目漱石が、明治四十三年に発表した小説『門』に、そのような一節が出てきます。
ここに「彼」とあるのは、物語の主人公「宗助」。明日は、元日。礼服の人が多いので、絹帽子なのでしょう。

シルクハットが出てくる短篇に、『三年』があります。
1895年に、チェホフが発表した物語。

「町中でシルクハットをかぶっているのは、彼一人だった。」

ここでの「彼」とは、「パナウーロフ」という人物。
また、『三年』には、こんな描写も出てきます。

「ラープチェフも皮外套を着て、外に出た。」

『三年』には、何度も「皮外套」が出てきます。原文では「シューバ」になっています。極寒地には最適の毛皮外套のことです。
シューバ shuba 。いろいろご意見もおありでしょうが。たとえばマイナス10度の世界でのシューバは必需品なのです。
どなたかシューバを仕立てて頂けませんでしょうか。

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