シェーファーとシャモア

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シェーファーという名の推理作家がいるんだそうですね。英国に。アントニー・シェーファー。『探偵スルース』は、代表作でしょうか。
アントニー・シェーファーはミステリ作家であると同時に、脚本家でもあって。たとえば、1978の映画『ナイルに死す』の脚本をも担当しています。もちろん原作は、アガサ・クリスティー。
英国にはもうひとり、劇作家のシェーファーがいましてね。ピーター・シェーファー。生まれ年も一緒。実は、双子の兄弟。五分ほどアントニーが先に生まれてきたんだとか。
シェーファーはどんな万年筆を使っていたのか。もしかしたら、シェーファーかも。万年筆の銘柄に、「シェーファー」ってありますよね。
「シェーファー」は、アメリカのウォルター・シェーファーがはじめた会社なので、その名前があります。1912年のことです。
ウォルター・シェーファーは、1867年7月27日の生まれ。アイオワ州、ブルームフィールドで。お父さんは、宝石商だったという。それで、ウォルター・シェーファーも、1906年に独立して、宝石店を開く。この扱い商品の中に、万年筆が。
ウォルター・シェーファーは、1907年に、「レヴァー・ファイラー」を考案。レヴァー・ファイラーは、1908年には特許を。レヴァー・ファイラーは、テコ式注入器。つまり、いちいち軸を開けなくても、インクを注入できる方式。軸の側面のレヴァーを開いて、元に戻すだけ。たったこれだけ万年筆にインクが入るようになったのですね。
シェーファーは、1921年に、「永久保証」を。この永久保証をあらわす白い点が、人気に。ここからシェーファーのホワイト・ドットを持つことが誇りとなったのです。
万年筆が出てくるミステリに、『ダブル・ダブル』があります。1950年に、エラリイ・クイーンが発表した物語。

「博士は万年筆のキャップをはめたりはずしたりしながら………………。」

これはドット博士の仕草。もっともホワイト・ドットではありませんが。セバスティアン・ドットという名前なんですね。『ダブル・ダブル』には、こんな描写も出てきます。

「かもしか革の手袋と、うす茶色の中折帽を暖炉のマントルピースの上に………………。」

これは、ホルダーフィールド弁護士の様子。
「かもしか革」は、たぶんシャモアのことです。シャモアは、薄く、伸縮性に富んでいるので、よく高級手袋に用いられる素材です。
さて、なにか手袋を嵌めて、古い万年筆を探しに行くとしましょうか。

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