ナナとパナマ

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ナナといえば、ゾラですよね。フランスの作家、エミール・ゾラの代表作、『ナナ』。ナナは魅惑の、蠱惑の、舞台女優という設定。
十九世紀後半のパリの夜が描かれている点でも、秀逸の小説。もっともゾラも「取材」のために、ずいぶんとパリの夜を探求しているようですね。それもひとりで行くのはちょっと心許ないので、親友のエドモンド・ゴンクールなどを誘って、一緒に行ってもらったとか。
『ナナ』は最初、パリの新聞『ル・ヴォルテール』に連載。もちろん、好評。ただしその一方、「不道徳である」の声もあったりして。1880年、シャンパルティエ書店から単行本として、『ナナ』出版。初版の、55,000部がたちまち売れて。その日に、10,000部を増刷したという。結局、一日で、65,000部売れた計算になるわけですね。
ゾラの小説『ナナ』はその後も、何度か演劇や映画にもなっています。
昭和三十年に、フランス映画『女優ナナ』を観たのが、永井荷風。六月四日のこと。銀座の「大栄会館」での試写を。もちろん『断腸亭日乗』に出ています。
また、昭和十二年九月八日の日記には。

「ケントン夏服にパナマ帽をかぶりたり。」

これは、従兄の永井素川の着こなし。「ケントン」は、「絹緞」のことかと。絹の、白い夏服。そして、パナマ・ハットを被っていたのでしょうね。

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