ティーとチョッキ

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ティーは、紅茶のことですよね。世に紅茶のお好きなお方も少なくはありません。
たとえば、ヒッチコック。ヒッチコックは珈琲党であるよりは、紅茶党であったようですね。映画監督の、アルフレッド・ヒッチコック。
アルフレッド・ヒッチコックは、1899年に倫敦のほぼ中央に生まれていますから、紅茶好きは当然であるのかも知れませんが。
1937年にヒッチコックは、アメリカのニューヨークへ。ニューヨークでヒッチコックがお気に召したのが、ステーキとアイスクリーム。で、ある時、「クラブ21」で昼食。「クラブ21」はその頃、ニューヨークでいちばんのレストランと謳われた店。
ヒッチコックは「クラブ21」で、「ダブルのステーキ」を注文。ふつうのステーキの二倍の厚さのステーキを。ダブルのステーキが食卓に届けられて、ヒッチコックが召しあがる。あっさりと平らげて、「アイスクリーム・パフェ」を所望。
ステーキを食べて、アイスクリーム・パフェ。これが終わったところで、「アンコール」。ダブルのステーキと、アイスクリーム・パフェ。
もうこれでおしまいかと思いきや、「ダブル・ステーキと、アイスクリーム・パフェ」。つまり、ヒッチコックは、「クラブ21」で、三枚のステーキと三つのアイスクリーム・パフェを食べたんだそうですね。
1937年8月26日のこと。これはドナルド・スポトー著『ヒッチコック』に出ている話なんですが。ヒッチコックは三枚のステーキと三つのアイスクリーム・パフェを食べ終えて、ひと言。
「うんと濃いティーが飲みたい。」
やはりヒッチコックは生粋の英国人だったのでしょうね。紅茶が出てくる映画に、『バルカン超特急』があります。1938年のヒッチコック映画。
『バルカン超特急』は、深い雪に閉じこめられるところから物語がはじまります。ようやく、「バルカン超特急」が動き出すことになって、その食堂車で。「ミス・フロイ」と名乗る老婦人が、紅茶を注文。でも、老婦人は自分専用の特別な調合の紅茶を持っていて、それを給仕に手渡して、淹れてもらう。その時のひと言。
「うんと熱いお湯を使ってね。」
これも英国人ならではの科白なんでしょうね。
『バルカン超特急』の冒頭。二人の英国紳士が、やむなく木賃宿に。それも、女中部屋に。宿が、満員なので。
やがて食事の時間になって、食堂に降りて行く。この時、ディナー・ジャケットに着替える。ホワイト・シャツに、ブラック・タイ。で、カマーバンドではなく、ドレス・ヴェスト。正装用チョッキ。
1938年には、すでにカマーバンドの時代になっていました。でも、『バルカン超特急』での英国紳士は二人ともに、ドレス・ヴェスト。やはり、英国人なんですねえ。
礼装用チョッキが似合いそうな、うんと濃いティーを味わってみたいものですね。

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