ステレオとスーツ

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ステレオは立体音楽のことですよね。左右にスピーカーがあって、そのスピーカーから微妙に異なった音が流れてきて、それを真ん中で聴くと、かなり立体的に聴こえる。ステレオ装置。
ステレオには、もうひとつがあって。「ステレオスコープ」。これは「立体写真」のこと。左右のレンズで撮影すると、微かに異なった映像が得られる。これを同時に眺めると、「立体写真」に。このステレオスコープに凝ったのが、萩原朔太郎。

「普通の寫眞機は、レンズが一つしかないのであるが、僕のはレンズが二つあって、それが左右同時に開閉し、一枚の乾板に、二つの同じやうな繪が寫るのである。」

昭和十四年『アサヒカメラ』十月号に、そのように書いています。
萩原朔太郎がはじめて「寫眞機」を買ったのは、明治三十五年のことなんだそうですね。当時の値段で、六十五銭だったという。明治三十六年には、もう「ステレオスコープ」になっていたそうです。
明治三十六年は、萩原朔太郎、十八歳の時で。ずいぶんハイカラなものがお好きだったらしい。マンドリンを弾き、ギターを弾いた。一時は真面目に、音楽の道に進もうとしたこともあったようですが。
萩原朔太郎は明治末からスーツをも着ていた。和服も着、洋服も。これは父、萩原密蔵の影響もあったでしょう。萩原密蔵は開業医で、はやくから西洋服を着ていたようですから。
あまりにも有名な朔太郎の詩ですが。

ふらんすへ行きたしと思へども
ふらんすはあまりに遠し
せめて新しき背広をきて
きままなる旅にいでてみん。

まあ、スーツ一着にもいろんな効用があるようですね。

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