Rとラウンド・カラー

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R はアルファベットの文字のひとつですよね。順番としては、Qの次、Sの手前の文字であります。Aから数えて、18番目の文字。そんなわけで俗に、なにかの18番目にあたることを「R」といったりもするようです。
Rは、たいていの日本人にとって苦手な発音でもあります。ひとつの例を挙げますと、r anch とl unch 。牧場と昼飯。こっちは牧場のつもりで「ランチ」と言っているのに、相手にはどうしても「昼飯」に聞こえてしまう。
私の知る限り、戦後間もなくの日本人で R が正しく発音できたひとりに、伊丹十三がいます。
R はまた、牡蠣を美味しく食べる季節のことでもありましょう。

「 R のつく月、それは牡蠣の季節で、牡蠣がお腹にあたらない、又美味しい季節である。」

森 茉莉著『貧乏サヴァラン』に、そのように出ています。また、森 茉莉は昔むかし、巴里で食べた牡蠣をこんな風にも書いています。

「 ユンヌ・ドゥゼエヌ・ウィツトォルといって、一ダースずつ一人前になっていた。」

森 茉莉は優れた随筆家でありました。と同時に優れた小説家でもありました。森 茉莉の短篇のひとつに、『金色の蛇』があります。この中に。

「角を円く裁ったカラの、淡いブルウのシャツに濃紺の背広…………………。」

これはたぶん、ラウンド・カラーのことかと思われます。
ラウンド・カラーの歴史も古く、十九世紀の、ハード・カラーの時代にすでにあったのです。ハイ・カラーで、ハード・カラー。襟先が尖っていると、頸にささる。で、あらかじめ丸くしておいたのです。
さて、時にはラウンド・カラーのシャツで、牡蠣を食べに行くといたしましょうか。

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