カヴァとガマッシュ

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カヴァはまあ、シャンパンのひとつなんでしょうね。発砲性白ワインのことを、スペインでカヴァ。イタリアでのスパークリング・ワインを、スプマンテというの同じように。ドイツでは、ゼクトとなるんだそうですね。
日本では、ふつう「シャンパン」。明治の頃には「サンパン」とも言ったらしい。このサンパン、もしくはシャンパンに宛字して、「三鞭酒」。「鞭」は「べん」とも訓むのでしょうが、やや強引に「三鞭酒」でサンパンとかシャンパンとも訓ませたのでしょう。
事実、宮本百合子には『三鞭酒』と題する掌篇小説があります。昭和二年の発表。『三鞭酒』には、「シャンペン」のルビが振ってあります。

「水色格子服の女性は、若い女のように小指をぴんと伸ばして三鞭酒盞を摘みあげた。男も。乾杯。」

「乾杯」の脇には、「プロウジット」のルビが添えてあります。
宮本百合子の『三鞭酒』は、あるホテルの食堂での光景。日本人三人が食事をしていると、西洋人の男女が入ってくる。で、西洋人は「三鞭酒」を註文。それで、日本人たちは「恋人同士ね」と推測する場面なのですが。
三鞭酒というべきかゼクトというべきか、トオマス・マンの生家はゼクトをも商う大きな商店だったという。
トオマス・マンが、1922年に書いた小説に、『詐欺師フェーリクス・クルルの告白』があります。この中に。

「選び抜かれた究極の形を持つアラバスターのような純白のカラーから柔らかなゲートルと鏡のように磨き込まれたエナメル靴まで………………。」

ここでの「ゲートル」はたぶん「ガマッシュ」g am asch e のことかと思われます。ドイツでの「ガマッシュ」は、スパッツのことなんだとか。
たまにはスパッツをつけて、シャンパンを飲みに行きたいものですよね。

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