バーバーとバーバリー

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バーバーは、理容店のことですね。むかしは「髪結床」といったものです。「床」は少し台になったところ。ここで髪を結ったので、髪結床。
江戸時代には結い賃が、一銭。で、「一銭床」とも言ったんだそうです。

「同じ新開の町はづれに八百屋と髪結床が庇合のやうな細露路、雨が降る日は傘もさされぬ窮屈さに……………………。」

樋口一葉の名作、『にごりえ』の一文であります。名文のお手本ですね。
「庇合」と書いて、「ひあわい」と読むんだそうです。軒と軒とが重なり合っている様子。美しい日本語のひとつでしょう。
バーバーで使う道具のひとつに、バリカンがあります。バリカンはもちろん、和製英語。なぜ「バリカン」なのか。これを調べに調べたのが、国語学者の、金田一京京助。調べに調べ、探しに探して。「喜多床」に明治に輸入された古いバリカン一挺があるらしい、と。
金田一京助は、当時、本郷、森川町にあった「喜多床」に。金田一先生の前に、錆びたバリカンで出てくる。よく見るとそこに刻印があって。バリカン・エ・マール。B arr iq u and et M arr 。
金田一京助がバリカンの語源を発見した瞬間でありました。
理髪店が出てくるミステリに、『鏡の映像』があります。ドロシー・L・セイヤーズが、1933年に発表した物語。

「街を歩いていたのは散髪したかったからで、ホウバンの通りの南側に、行きつけの理髪店があったのです。」

これは、ある男の述懐。彼は、何を着ているのか。

「つば広のソフト帽に、バーバリーのレインコートといういでたちなんです。」

物語の背景が倫敦ですから、「バーバリーのレインコート」が出てくるのも当然でしょう。
さて、バーバリーを羽織って、バーバーを探しに行くとしましょうか。

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