コーヒーとコロン

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コーヒーは、美味しいものですよね。コーヒーは味わいもさることながら、あの誘惑的な薫りに惹かれます。
そのコーヒーを飲んでいる間、その蠱惑の匂いに包みまれているわけです。それで自分自身を浄めるのでしょう。ちょうど修験僧が護摩を焚くのに似て。コーヒーを飲む時間。あれはちょっとした「宗教の時間」でもあるのでしょう。
コーヒーがお好きだったお方に、山頭火が。種田山頭火。と、たぶん意外な顔つきをなさるに違いありません。山頭火といえばなんといっても、酒の印象がありますからね。

私は二日酔いをしない、いうぜんとして落ちついてゐる。
涼しく昼寝、あゝ勿体ない。赦して下さい、すみません。
昼も夜も暮羊君来庵、ブラジルコーヒーを味ふ。

昭和十三年『山頭火全日記』、七月二十四日のところに、そのように書いています。なんでもない日記がちゃんと詩になっていますよね。
その次の日。七月二十五日の日記には。

「雪国を読む、寂しい小説だ、康成百パアの小説だ……………………。」

そんなふうに出ています。山頭火はブラジル・コーヒーを飲みながら、『雪國』を読んだのでしょうか。
コーヒーを毎日のように飲んだ作家に、サルトルが。フランスの知性、ジャン・ポオル・サルトル。

「ブラックコーヒーとクロワッサン」

サルトルの小説『嘔吐』の一節。『嘔吐』だけででも何杯ものコーヒーが出てきます。もう、こうなればほとんど水代りなんでしょうか。
サルトルの小説、『水入らず』には、こんな場面が出てきます。

「男の吸うイギリス煙草の匂い、オー・ド・コローニュの香水のかおり、それから………………………」。

たしかに、コロンの淡い薫りは佳いものです。ただし、過ぎたるは及ばざるがごとし、でもありますが。
美味しいコーヒーをゆっくり味わいながら、どのコロンにするか、考えてみましょうね。

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