シャボンと霜降り

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シャボンは、石鹸のことですよね。ほら、「シャボン玉」っていうではありませんか。でも、シャボン玉とは今でも使いますが、シャボンとはあまりいいません。石鹸は、石鹸。たぶん、シャボンは明治語なんでしょう。
1960年代はじめ、『シャボン玉ホリデー』というTV番組があって、毎週のように観ていました。牛乳石鹸の提供なので、『シャボン玉ホリデー』。「ザ・ピーナツ」が広く知られるようになったのは、『シャボン玉ホリデー』からではないでしょうか。
シャボンがフランス語の「サヴォン」 s a v on から来ているのは、間違いないでしょう。英語なら、「ソープ」 s o ap 。ソープもサヴォンも、もとをを正せば、ラテン語の「サポー」S ap o に由来するんだとか。古代ローマにサポーの丘があって、ここで今の石鹸が作られたとの言い伝えがあります。

「階下の台所で、シャボンをつけ、再びゴシゴシ自分の指を洗った。」

武田泰淳が、昭和二十三年に発表した『「愛」のかたち』の一節。昭和二十年代でも、まだ「シャボン」は生きていたものと思われます。ということは明治の時代には当然、「シャボン」であったでしょう。

「今まで着てゐた洋服と着替へて、又革包の処へ行つて、手拭やらシヤボンやら出して…………………。」

森 鷗外が、明治四十二年に書いた『烟塵』には、そのように出ています。これは四国の金毘羅を訪れたある博士の様子。では、博士は何を着ているのか。
森 鷗外の『烟塵』には、そのことについても書いてくれています。

「霜降の洋服に寛く包まれてゐる、痩せた体を……………………。」

博士は、ペッパー・アンド・ソルトの服装なんですね。黒胡椒と塩とを散らしてように想えるので、「ペパー・アンド・ソルト」。
なにか霜降柄のスーツを着て、少し上等のシャボンを探しに行くとしましょうか。

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