白馬と芯地

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白馬は、白い馬のことですよね。すなわち、ホワイト・ホース。
そこで白馬からすぐに、ウイスキイを想い浮かべるお方もいらっしゃるようですが。
ウイスキイの銘柄としての、「ホワイト・ホース」は、1881年にはじまっています。マッキン・ジェイムズによって。
では、どうして「ホワイト・ホース」かと言いますと。マッキン・ジェイムズがウイスキイを納めていた宿の名前が「ホワイト・ホース」だったのです。
スコットランド、エディンバラの、「ホワイト・ホース」は、1741年の創業というから、古い。ここの酒蔵にマッキン・ジェイムズはウイスキイを買ってもらっていた。で、「ホワイト・ホース・セラー」を銘柄にした。後にセラーが消えて、「ホワイト・ホース」となったわけですね。
当時のエディンバラで、宿の「ホワイト・ホース」を知らない者はいなかった。ここは駅馬車の発着所だったから。エディンバラからロンドンへの駅馬車は、「ホワイト・ホース」から、出発。毎朝の、五時に。ただし、土日はお休み。
エディンバラを四頭立ての馬車で出て、八日後に、ロンドンに。これを「ステイジ・コーチ」と言った。

「彼は眼を眠つて、家に帰つたら、又ヰスキーの力を借りやうと覚悟した。」

夏目漱石の『それから』の一節。「ヰスキー」は、たぶんウイスキイのことでしょう。漱石の時代には多く舶来ウイスキイですから、ホワイト・ホースの可能性無きにしも非ずでしょう。少なくとも、スコッチ・ウイスキイだったはずです。
白馬が出てくる小説に、『現代の英雄』があります。ロシアの作家、レールモントフが、1839年頃に書いた長篇。

「ちょうど白馬がくろい髭とくろい尻尾をはやしているようなものである。」

これは、ある肖像画の印象について。また、『現代の英雄』には、こんな描写も。

「黒い大きなネクタイがいやに固い心に巻いてあって、その剛毛のネクタイ心が彼の顎をささえるように襟から二センチの余も突き出ているのに……………………。」

これは、グルシニーツキーという人物の着こなし。ここでの「心」は、おそらく芯地を指しているのでしょう。想像を逞しくすれば、「馬素」かも知れません。馬の鬣を織り込んだ、固い芯地。
ほんとうは、芯地には頼りすぎないほうが良いのです。芯地の存在が気づかれないほどの、自然さ、表地との一体感が好ましいのです。軽い芯地の乗馬服で、白馬に乗ってみたいものですが。

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