バターとバラクラヴァ

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バターは、牛酪のことですよね。半ば固められた牛乳でもあるでしょう。
純良牛乳を、密閉した器に入れて、撹拌すると、あら不思議、バターに変身します。もっとも手が疲れること、甚だしいのですが。
バターは見たところ、大きなキャラメルのようですが。口に含むと、美味がとろけ出してきます。私にとってのバターは、おやつ代りでもあります。
今のように西洋式バターが一般に普及しはじめるのは、やはり明治になってからのことでしょうね。

「近くハ銭湯帰。藥喰、牛乳。乾酪 ( 洋名 チーズ ) 乳油 ( 洋名 バタ )……………………。」

明治四年に、假名垣魯文が発表した『安愚楽鍋』の一節に、そのように出ています。假名垣魯文は、「バタ」と書いています。また、牛乳には、「みるく」のルビをふっているのですが。明治期には、「バタ」と表現することが多かったようであります。
バターの出てくる小説に、『最後の晩餐の作り方』があります。1996年に、
ジョン・ランチェスターが発表した物語。

「………小麦粉四オンスに牛乳二分の一パイント、卵黄二個分、砂糖ととかしバター大匙一杯づつ……………………。」

これはブリニの作り方についての説明部分。
また、『最後の晩餐の作り方』には、こんな描写も。

「………ダッフルコート並びに毛糸の眼出し帽という完全防寒の……………………。」

これは幼い時の主人公が、冬のリュクサンブール公園に出かける身支度について。
「眼出し帽」の横には、「バラクラヴァ」のルビがふってあります。
バラクラヴァ B a l ak l a v a は、クリミア半島の地名ですね。
「クリミア戦争」の激戦地。ことにセヴァストポリの激戦はよく知られているところでしょう。
このセヴァストポリに物資を海から運ぶための港が、「バラクラヴァ」だったのです。
時は、1854年の冬。温かい時で、マイナス16度くらい。寒くなると、マイナス38度くらい。
この厳寒のなかで生まれた帽子が、バラクラヴァだったのです。とにかく目と口以外覆っておくより仕方がなかったのです。
どなたかピンクの絹糸で、バラクラヴァを編んで頂けませんでしょうか。

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