きんとんと金モール

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きんとんは、おいしいものですよね。むかしから、お節料理に欠かせないものになっています。
きんとんは、栗などで作るものですから、甘い。甘いから、辛口の酒にも合うのでしょう。
きんとんは、江戸時代には、菓子のひとつだったという。菓子からやがて料理にもなって。いや、今でも「きんとん」の名前の菓子も作られているようですが。
きんとんに、どんな文字を宛てるのか。きんとんはどんなふうにしてはじまったのか。これにも、いろんな説があるみたいですね。というは、結局のところ、よく分かってはいないのでしょう。

「いつものごとくけふの御かづうながはしより、あしたの物にきんとんまいる。」

慶長三年『御ゆどののうへ日記』六月十六日のところに、そのように出ています。
ここでは、「金飩」の字が用いれています。きんとんは、あるいはその色から来ているのでしょうか。
むかし、公任公というお方がいらして、この公任公が大好きだったので、「きんとん」になったとも。
きんとんがお好きだった作家に、武田百合子が。もっとも好きも嫌いも、きんとんは時節物ですからね。

「湯島で降りて、アメ屋横丁で、いくら、たこ、ピータン、干あんず、かまぼこ、だてまき、ぶり切身、きんとん………………」。

武田百合子著『日日雑記』には、そのように出ています。これは年末に、「H」といっしょに買物に行く様子。「H」はたぶん、武田泰淳とのお嬢さん、武田 花のことかと思われます。
武田百合子は、ご主人の武田泰淳を通して、大岡昇平の話も出てきます。

「刺繍のある金モールみたいな縁のついたパジャマを着ていたぞ。」

大岡昇平、ある時、入院中の医者を見舞いに。と、その医者は、金モールの飾りのあるパジャマを。大岡昇平は、その金モールのパジャマが欲しくなった、という話を武田百合子は紹介しています。
金モール。いいものですね。金モールのパジャマで、きんとんと参りますか。

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