『エスクァイア』は立派な雑誌ですよね。1933年の創刊。
『エスクァイア』は突然に生まれたのではなくて。その前身があります。『アパレル・アーツ』がそれです。『アパレル・アーツ』に飽きたらなくなったアーノルド・ギングリッチがはじめて雑誌なんですね。
1932年にA・ギングリッチが手紙を出した相手が、ヘミングウェイ。たぶん最初は小説の読者として出したものでしょう。それがやがて文通になって。手紙の上で、すっかり仲良しに。
A・ギングリッチはヘミングウェイの『午後の死』を高く評価していて。
「もし『午後の死』の初版に署名してくれたなら、『アパレル・アーツ』の合本を送りましょう。」
そんな内容の手紙をヘミングウェイ宛に出しています。ヘミングウェイはそれに応えた。ギングリッチはヘミングウェイに、『アパレル・アーツ』の合本を送っています。
ギングリッチはヘミングウェイに対して、服装への助言もしていて。
「貴方のサイズを教えてください」とも。ギングリッチはそのサイズをもとに、バックスキンのスポーツ・コートを贈っています。ヘミングウェイは、そのスポーツ・コートを好きになってしまったという。1933年のことです。それからギングリッチはヘミングウェイに提案を。
「もし記事を書いてくださったなら、一編につき250ドルを前金でお支払いいたします。」
ヘミングウェイが記事を寄せてのは、言うまでもないでしょう。
アーネスト・ヘミングウェイ著『日はまた昇る』が刊行されたのが、1926年のこと。1926年に生まれたのが、エド・マクベイン。エド・マクベインが、1997年に発表したのが、『ノクターン』。このなかに。
「ジョージとトニーは、ベルト付きコートにウールのマフラー。フェドーラをすっぽりかぶり……」
ジョージ・アンジェロと、トニー・フラスカティの2人組なんですね。
フェドーラ fedora は、ソフト・ハットの一種。ヴィクトリアン・サルドーの『フェドーラ』で、女主人公が被ったので、その名前があります。