ボウルは、鉢のことですよね。器のこと。
木の鉢もあれば、金の鉢もあります。また、暑いガラスの鉢もあるでしょう。
木鉢はサラダを混ぜる時などにも重宝します。また、金属製、ガラス製の鉢なら、ケエキ作りに欠かせないでしょうね。
よくフットボールの広い会場のことを、「○○ボウル」と呼ぶことがあります。あれは擂り鉢状になっているから。
ボールboal は「玉」。ボウルbowl は「鉢」。似て非になる一例でしょうか。
もっとも「小鉢」なんてものもありまして。ぬたの味噌和えを頂くには、もってこいの器でありましょう。
「取置く椀箱のじゃまなし、こごり鮒の鉢をあらし、」
井原西鶴の『好色一代男』に、そのような一節が出てきます。これは女郎屋にあがって、女中の邪魔をしている場面として。
そういえば、鉢もあれば、椀もあるのでしょう。鉢があって椀があって。これも日本文化のひとつであります。
「そこには十円玉を二枚入れると細かい氷の塊が備えつけのボウル一盃分だけ出てくる仕掛けの自動販売機があった。」
作家、阿部 昭が、昭和四十五年に発表した『指令の休暇』に、そのような描写が出てきます。
これは物語の主人公の父が入院している病院でのこととして。
ボウルが出てくる長篇小説に、『ユリシーズ』があります。
1922年2月22日に、ジョイスが発表した物語。
ジェイムズ・ジョイスの代表作のひとつであること、ご存じの通り。
「重々しくて肉づきのいいバック・マリガンが、シャボンの泡立つボウルを捧げて階段口に現れた。」
これが『ユリシーズ』の最初の一行なんですね。
物語の時代背景は、1904年6月16日。たった一日の出来事を、長篇に仕上げた小説なんですね。
これは、朝八時。マラカイ・マリガンの様子。洒落者なので、あだ名が「バック・マリガン」。これから髭を剃ろうとしている所。
それで、シェヴィング・ボウルを持っているわけですね。
十九世紀以前には、シャボンを顔に塗って、髭を剃ったものです。
当時、『ユリシーズ』は猥褻文書だと考えられていて。でも、今読むと、猥褻な文章は一行も見あたらないのですが。
その事情をジョイスが巴里で、「シェイクスピア・アンド・カンパニー」のシルヴィア・ビーチに話すと。「うちで出しましょう。」
ジョイスの方にもひとつだけ条件があって。「2月22日に出して欲しい。」
2月22日は、ジョイスの誕生日なので。
『ユリシーズ』を読んでおりますと。こんな描写も出てきます。
「彼はエニスの大通り四番地ジェイムズ・カレン一般衣類販売店で新品の超スマートかんかん帽を購入した。」
これは1886年6月27日午後3時15分に。
ここでの「かんかん帽」は、「ボーター」boater のことでしょう。
その昔、ボート競技の選手がかぶった帽子なので、「ボーター」。
どなたか十九世紀のボーターを再現して頂けませんでしょうか。