スタインとスリップ・オーヴァー

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スタインで、アメリカ女性でといえば、ガートルード・スタインでしょうね。現在、なぜか、ガートルード・スタインは過少評価されているように思えてならないのですが。
ガートルード・スタインがピカソの発見者である、とまでは言いませんが。少なくとも無名時代のピカソをよく識るお方であったことは、間違いないでしょう。事実、ピカソの初期作品を含む蒐集家であったのは、否定できません。
若き日のピカソがスタインの肖像画を描いているのも、有名。肖像画が完成したとき、ガートルードは言った。「この絵は私には似ていない。」その折のピカソのひと言。
「なあに、そのうちに似てきますよ」
ガートルードはピカソのみならず、ヘミングウェイにも影響を与えています。ヘミングウェイは構想や下書ができると、スタインに見せることもあったらしい。
では、スタイン自身は誰の影響を受けたのか。フロベール。ギュスターヴ・フロベール。スタインは、フロベールの『三つの物語』を読んで、『三人の女』を書いたと伝えられています。スタインが『三人の女』を書きはじめたのは、1905年ころのことであったという。
ガートルード・スタインが出てくる小説に、『良家の人々』があります。イーヴリン・ウォーが、1927年に発表した物語。

「 レディー・ガートルードは言った。 スティルについて本当のことをお話ししたほうがいいんじゃないかしら? 」

この「レディー・ガートルード」は、ガートルード・スタインのことなのです。ウォーの『良家の人々』には、こんな描写も出てきます。

「四つのボタンがついた、彼には小さ過ぎる光沢のある青いスーツ。( 中略 ) その襟元に、固いイブニング・カラーを付け、非常に細いネクタイをセイラーノットにしていた。」

もちろん「良家」の青年の着こなし。「セイラー・ノット」には、多くの別名があります。たとえば、「スリップ・オーヴァー」。ネクタイのもっとも基本となら結び方のことです。
ドレス・シャツにタイを結んで、スタインの初版本を探しに行くとしましょうか。

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