トランクとトゥイード

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トランクは、旅鞄のことですよね。トランクを愛用したお方に、「寅さん」がいます。ダブルの背広に雪駄、そしてトランクのないことには「寅さん」にはなれません。
トランクはその昔、「台鞄」とも言ったらしい。旅先での寝台の下に入れておく鞄なので。英語の「スティーム・トランク」とよく似た表現ですね。スティーム・トランクは、蒸気船での旅に、やはりベッドの下に収められる鞄のことだったのです。
トランクが出てくる小説に、『あめりか物語』があります。

「行李を開けるか開けない中、又候海外へ行かうなぞとは、全く自分でも意外な心持がするです。」

これは同じ船旅の「柳田」という人物の会話について。荷風の部屋にやって来て、ウイスキイを飲んでいる場面。
荷風は、「行李」と書いて、「トランク」のルビを添えているのですが。荷風もやはりアメリカ行きには、トランクを用意していたのでしょう。
トランクが出てくる伝記に、『サキの思い出』があります。サキは英国の短篇作家、サキのこと。もっともサキは、筆名。本名は、ヘクター・ヒュー・マンロー。1870年に生まれています。1916年に、戦死。
エセル・M・マンローは、サキの実のお姉さん。

「おばたちは満足のいくだけ食べるとトランクのなかに畳んでいるドレスの間に壺を置きました。」

これはジャムの一種を。要するに、サキは子供の頃から、いたずら好きの少年だったことを、語ろうとしている場面なんですね。
また、『サキの思い出』には、こんな描写も出てきます。

「今はツツイードのスーツを着て、ぬかるみを何食わぬ顔で歩いているが、あのスーツはそのうち庭師の息子のものとなり、しかもピッタリしているに違いない。」

うーん、トゥイードのスーツは何代にもわたって着るものなんですね。
どなたか長持ちするトゥイードのスーツを仕立てて頂けませんでしょうか。

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