フォードと絹靴下

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フォードはアメリカの自動車の名前ですよね。
1903年に、ヘンリー・フォードがはじめたので、その名前があります。フォードで有名なのは、「T型フォード」でしょう。この「モデル T」の名前は「モデルA」からはじめて、B、C、D………。たまたま「T」の順番だったので、「T型フォード」となったとも伝えられています。
「T型フォード」が自動車におけるはじめての大量生産であったのは、間違いないようですね。そのために1908年には、850ドル。これは当時の車の値段としては、特別に安かった。それで売れに売れて。1923年には、265ドルにまで下がったそうです。
1920年代のパリで「T型フォード」に乗っていたのが、ガートルード・スタイン。ガートルード・スタインの「T型フォード」が故障。それで「T型フォード」をパリの修理工場に出す。
ガートルード・スタインが自動車を受け取りに行くと、今まさに若い修理工が直しているところ。その若い修理工の手際を見た工場主が言った。
「君たちは結局、失われた世代なんだなあ」
この何気ないひと言がガートルード・スタインの耳に残った。これは第一次大戦帰りの若者を指しての言葉だったのです。
その後、ヘミングウェイがガートルード・スタインに会って、書いたばかりの小説を読んでもらう。その時の感想としてガートルード・スタインは言った。
「あなたたちは、失われた世代です」。こうして「ロスト・ジェネレーション」の言葉が生まれたという。1926年のことです。
1926年に発表された短篇集に、『キャジュアライナ樹』があります。サマセット・モオムの作。この短篇集のひとつが、『手紙』。『手紙』の中に。

「ピカピカよく光るエナメル革の靴に絹靴下をはいている。」

場所はシンガポール。季節は夏。これはその地の弁護士、ジョイスの秘書の着こなしなんですね。
エナメル革の靴ももちろんですが。絹靴下にも憧れますよね。

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