ピクニックとピケ

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ピクニックは、物見遊山のことですよね。どこかの野原に出かけて、大自然の空気の中で、茶を飲んで、弁当を食べる。日ごろの気分転換にはなによりの特効薬でしょう。遠足とピクニック、どこがどう違うのか、違わないのか。
ピクニックは、英語。フランス語では、「パルティー・ド・カンパーニュ」。直訳すれば、「野原のパーティ」。どうもピクニックは、野原と大いに関係がありそうですね。
永井荷風の『あめりか物語』を読んでいると。

「私は春の野辺へ散策に出て大きなサンドウイツチや、林檎を皮ごと横かぢりして居る娘を見ても……………」。

と、出てきます。そして「散策」の横に、「ピクニツク」のルビがふってあります。たぶん、明治四十年頃のことなんでしょう。荷風が実際にピクニックに行ったかどうかはさておき。荷風の頭の中に「ピクニック」の言葉が仕舞い込まれていたのは、間違いないでしょう。
ほんとうにピクニックをした人に、大庭みな子がいます。1949年頃の話。その頃、大庭みな子は津田塾の生徒で。津田塾は、小平にあった。その津田塾の近所に住んでいたのが、佐多稲子。大庭みな子は友だちと一緒に佐多稲子の家を訪ね、ピクニックを共にしたという。野猿峠の草原で。佐多稲子は、その草原の上で、バレエを踊ったそうですが。
佐多稲子が、1954年に発表した小説に、『燃ゆる限り』があります。この中に。

「紺のピケのツウピースを、白いシャツブラウスに着更えて卓袱台の前に出てきた。」

これは、昭子という女の様子。ピケ pique は、畝織地のことですよね。ピケにはもともと「刺す」の意味があります。生地の上からもう一度「刺して」あるかのように想えるので、その名前があるのかと。
もちろんピケは女物と限っているわけではありません。いつか、きっと、白ピケのスーツを仕立ててみたいものですね。そのそう、ピクニックにも着て行けるでしょうし。

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