バースとバスローブ

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バースは、イギリスの街ですよね。もちろん、バース Bath と書きます。
バースは、ロンドンから列車で約一時間半くらいの所にあります。古代ローマの時代から栄えた街ですから、古都とも言えるでしょう。
風呂のバスは、「バース」から来ている。いや、そうではないとか、賑やかな論争が今も続いています。まあ、それほどに古い温泉場であったことは、間違いありません。
十八世紀に、このバースの街を美しく整えた人が、ボウ・ナッシュ。本名を、リチャード・ナッシュという洒落者。ボウ・ナッシュはギャンブラーでもありましたが、古代ローマの匂いを取り戻そうとしたのです。
その結果、バースの街は美しく蘇り、ボウ・ナッシュは「キング・オブ・バース」とも呼ばれたものです。少なくとも今のバースの美事さと、ボウ・ナッシュとが結びついているのは、事実でしょうね。
このバースに生まれたものに、「サリー・ラン」があります。それは十七世紀のこと。十七世紀のフランスではユグノーの迫害があり、多くの人びとがフランスを去りました。美しい少女、サリー・ランもそのひとりで。サリーはバースの街に着いて、パン屋で働くことに。
その時、サリー・ランはフランスのブリオッシュの焼き方を伝える。それが今の「サリー・ラン」のはじまりなんだそうです。
一方、「バース・バン」もバースの名物。これも丸い食事パンなんですが、上に砂糖がかかっています。また、ナッツやレーズンを練りこむこともあります。「バース・バン」は十八世紀のバースに誕生したと、考えられています。
知る人ぞ知るバース名物に、バース・エールがあります。バース特産のビール。こくと深い香りのビール。
こくのあるビールが出てくるミステリに、『死時計』があります。ディクスン・カーが、1935年に発表した物語。

「彼はいかなる珍味よりも、できのよいロースト・ビーフとこくのあるビター・ビールを好んだ。」

「彼」が、探偵役の、フェル博士であるのは、言うまでもありません。
では、ふだん自室では何を着ているのか。

「けばけばしい色のバスローブをまとったフェル博士は………………」。

なにも「けばけばしく」なくて良いのですが。バスローブは一枚欲しいものですね。
好みのバスローブで、バース・エールを飲んでみたいものですが。

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