Rとラウンド・カラー

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Rは、アルファベットのRですよね。Qの後ろ、Sの前の文字。このRがカキと関係がありまして。
「Rのつかない季節にカキを食べるな」と言います。たとえば「オーガスト」にはRがつきません。だから8月には生ガキは食べないほうがよろしい。
ところ「セプテンバー」september にはRがつきます。カキの美味しい時期なのですね。
森 茉莉ももちろん、この「R」の話を知っていて、『「R」の季節のはじめ』と題する随筆を書いています。つまりは故き佳き時代の巴里でカキを食べる話。

「地中海の牡蠣は、ボッチチェリのヴィナスが生まれた海と続いた海でとれるだけあって、美しい女のような貝である。」

と、もうはなから森 茉莉調の形容ではじまるのですが。当時の巴里もまたカキばかりは一ダース二ダースの単位で食べるのがふつうだったと、書いています。
森 茉莉はあれやこれやカキの話をこれでもかと、書いてその最後を次のようにしめくくる。

「海の泡から生まれた美女、ヴィナスの足に触ったこともあるかもしれないような、地中海の牡蠣を思い出さないでいられない。」

森 茉莉の随筆ではなく小説に、『恋人たちの森』があります。その中に。

「白絹の、角の丸いカラのワイシャツに濃紺のチョオク・ストライプの背広……………」。

これは、「パウロ」という男の着こなし。つまりはラウンド・カラーのシャツなのでしょう。
どうしてラウンド・カラーのシャツがあるのか。これはその昔の、ハード・カラー、シングル・カラーからはじまっています。襟の先が尖っていては、危険だから。それくらい十九世紀の襟はハード・カラーだったのでしょうね。
さて、時はラウンド・カラーのシャツで、カキを食べに行きたいものですが。

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