シャネルと縞ズボン

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シャネルはもちろん、ココ・シャネルのことですよね。ガブリエル・シャネル。「ココ」は、自分でもお気に入りだった愛称。そのシャネルで有名なのが、「シャネル・スーツ」でしょう。
シャネル・スーツが、英國の大貴族、ウエストミンスター公爵の普段着だったカーディガンにヒントを得ているのは、広く知られている通りです。
シャネルが出てくる小説に、『剃刀の刃』があります。1944年に、サマセット・モオムが発表した物語。その時代背景は、1919年頃になっています。

「わしがとっくり考えたあげく、お前が買うのに、シャネルよりましなところはない、という結論に達したのさ」

これは兄のエリオットが、妹のブラッドリーに対しての科白。妹を巴里に呼びよせるに際しての、配慮として。専任の、着付け係までも雇って。エリオットは、アメリカの富豪という設定。今、シャネルの服は買えないでもありません。でも、そのための「着付け係」を雇うまでには、なかなか。この兄の言葉に対する妹の返事。

「あたし、これまでいつもワースが行きつけなんですよ」

ここでの「ワース」は、ウォルトのことかと思われます。シャルル・フレデリック・ウォルト。W orth 。英語式には「ワース」かも知れませんし、フランス式には「ウォルト」でしょう。
ウォルトは英國で生まれ、巴里で活躍したオートクチュール・デザイナー。巴里で店を開いたのは、1840年代のことですから、ほとんどオートクチュール草分けの人と言って良いでしょう。「ウォルト」の店は代々、息子たちによって引き継がれたものです。
『剃刀の刃』には、こんな描写も出てきます。

「ペトログラードの、とり澄ました客間で、ロシア茶を飲んでいると、黄色い上着に縞ズボンを穿いた………………」。

これはもちろん、ロシアでの様子。
「黄色い上着に縞ズボン」。いいですね。縞ズボンはもともと英國の、乗馬用のズボンから来ています。乗馬ズボンから時代を経て、礼装用となったものです。
これからは縞ズボンを、もっと自由に考えることにいたしましょうか。ちょうどシャネルがそうであったように。

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