スープとスタッド

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スープは、美味しいものですよね。でも、スープは食べるものなのか、飲むものなのか。永遠の謎であります。
ポタージュは食べる、コンソメは飲む。そんなふうにおっしゃるお方もいらっしゃるようですが。
スープの言葉の前には、「ブロス」の言い方があって。「ブロス」の言葉h一般化するのは、だいたい1000年頃のことなんだそうです。
スープがお好きだったのが、石井好子。

「私はスープが好きで、朝食にスープがつけばパンがよりおいしく食べられるし、疲れたときの夜食にはスープが何よりと思う。」

石井好子著『パリ仕込みお料理ノート』に、そんなふうに書いています。
石井好子が巴里に住んでいたとき、ピアノ伴奏をしてくれていた、フランス人男性がいて。
そのピアノ伴奏者が、急に病を得て、世を去った。奥さんはイギリス人女性で、巴里には身寄り頼りがいない。そんなこともあって、毎日毎日、泣いてばかり。食事をすることもままならず。
そこで石井好子は彼女のアパルトマンへ行って。ポテト・スープを作った。彼女はポテト・スープを飲んでいるうちに、だんだん元気が出てきたという。
スープが出てくる小説に、『感情教育』があります。フロベールが1869年に発表した物語。いや、フロベールの代表作のひとつというべきでしょう。

「若旦那のスープの支度ができましたと料理女中が知らせた。皆は遠慮して引き上げた。」

また、『感情教育』には、こんな描写も。

「白麻のシャツにはふたつのエメラルドが光り、そして太い白ズボンが、青い色の模様をくっきりと縫い取りしたロシア革の、風変りな赤い長靴の上に垂れていた。」

これは、巴里の、ジャック・アルヌーという人物の着こなし。
「ふたつのエメラルド」は、たぶんスタッドのことなんでしょう。
ポテト・スープもいいですが。エメラルドのスタッドもいいですねえ。

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