スプーンとスリップ・オン

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スプーンは、匙のことですよね。もっとも今はあまり匙とは言わないようですが。では、スプーンはどんな時に使うのか。
たとえば、アイスクリームを食べる時に。目の前に、銀皿の上に鎮座ましましたヴァニラ・アイスクリームがあったとしましょう。もしこれでスプーンがなかったとしたら、泣きたくなってしまいます。アイスクリームには銀のスプーンが必需品です。
今、アイスクリーム。昔は、「アイスクリン」と言ったものであります。万延元年に、遣米使節団が派遣されたのは、よく知られている通りでしょう。この時、アメリカで「アイスクリン」が出されています。

「氷を色々に染め、物の形を作り、是を出す。味は至って甘く、口中に入るに忽ち解けて美味なり。是をアイスクリンと云ふ。」

『柳川日記』三月二十四日のところには、そのように出ています。もちろんアイスクリームのことかと思われます。言葉の順序からいえば、まずアイスクリンがあって、それからアイスクリームになったのでしょう。
その昔、アレキサンダー大王は、東方遠征の途中、アイスクリームを食べた。もっともそれはミルクやフルーツに、山の頂上から運ばせた雪を加えた食べ物だったそうですが。もし、これをも「アイスクリーム」の仲間だとするなら、数千年の歴史があるのかも知れませんね。
アイスクリームを食べる時、一滴のジンを加えるやり方があります。さらにさらに、味と薫りのひきたつものです。もっともジンはお好みで。あるいはブランデーやラムのほうが、とおっしゃるお方もあるでしょうが。このジンなどのスピリッツを加える折にも、スプーンは役立ってくれます。
アイスクリームにはスプーン。これ、常識でありましょう。
アイスクリームが出てくる小説に、『こども』があります。北 杜夫が、昭和四十三年に発表した物語。

「さっき目をつけておいた、ごてごてと桜ん坊や桃やパイナップルを飾り立てたアイスクリームを注文した。」

これは父が男の子とアイスクリームを食べる場面。男の子は息子で、「輝彦」と設置されています。また、『こども』には、こんな描写も出てきます。

「花模様のシャツを着ているものもあれば、素足にズックのスリッポンをはいている若者もいた。」

これはたぶん、スリップ・オン・シューズもことなんでしょうね。靴紐もバックルもなくて、足を滑らせて履くところから、スリップ・オン。よくアメリカで用いられる表現です。
さて、スリップ・オン・シューズで、ちゃんとスプーンが添えられるアイスクリームを食べに行くとしましょうか。

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