ファウストとプラス・フォアーズ

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ファウストは、ドイツに多い名前ですよね。広く識られているのは、ファウスト博士でしょうか。
ゲエテの戯曲『ファウスト』はあまりにも有名でしょうね。二十四年間の命と引き換えに、快楽を得るよう悪魔と契約した人物として。
ファウストが実在の人物であったのは、間違いないらしい。ヨハン・ゲオルク・ファウスト。およそ1480年頃に生まれ、1540年頃に世を去ったという。
ヨハン・ゲオルク・ファウストは、もともと占星術師。それが並外れた能力を持っていたので、なにかと話題になったらしい。そもそものはじまりは、英國のマーロウが、1529年頃に書いた『フォースタス博士の悲劇』が火つけ役であった、と。

「少女は驚き縋寄らうとすると、寺院の屋根に十字架の光輝き、悪魔はこれを恐れ憚るさまにてマントーの袖に顔を隠せば、フォーストの姿は早や消えて後もない。」

異国で『ファウスト』の芝居を観た永井荷風は、その印象記を、そのように書いています。
では、荷風はどのような服装だったのか。さあ。でも、『雪のやどり』という随筆には。

「真黒な燕尾服にオペラハット。真白な襟飾に、真白な手袋。いよいよ出掛けやうと………………………」。

と、ありますから、やはりイヴニング姿だったのでしょうね。
ファウストが出てくる小説に、『この日曜日』があります。1966年に、ドノーソが発表した物語。

それにファウストがそのころ働いていた修理工場からもらってきたカレンダーがひとつ。」

もちろん同名異人ではありますが。また、『この日曜日』には、こんな描写も。

「ぼくは自分がはいているゴルフズボンをいとこたちにみせびらかせたかった。」

なぜなら、それは新品のゴルフズボンだったから。これはたぶん、プラス・フォアーズなのでしょう。膝下から四インチほどゆとりがあるので、「プラス・フォアーズ」。
ファウストを観に行くには最適ではないでしょうが。

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