推理小説とスパッツ

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推理小説は、探偵小説のことですよね。探偵小説は、ミステリのことでもあります。
ミステリなのか、探偵小説なのか、推理小説なのか。ごく大ざっぱに申しまして、戦後以降は主に「推理小説」。明治から戦前までは、多く「探偵小説」と呼ばれたんだそうです。「ミステリ」は、1953年にはじまった、「ハヤカワ・ポケット・ミステリ」の影響が大きいでしょう。
「ハヤカワ・ポケット・ミステリ」の第一弾は、ミッキー・スピレインの『大いなる殺人』だったという。この時の編集者が、田村隆一。顧問格に、江戸川乱歩と植草甚一がいたという。
それより前の、1946年に、当用漢字が発表されて。その中には「偵」の字が定められていなかった。つまり「探偵」の文字が使えないと思ったのでしょう。それで、探偵小説に代る言葉として、「推理小説」が用いられることに。
その頃、新宿に「雄鶏社」という出版社があって。編物や映画の雑誌以外に、探偵小説をも出していて。「さて、どうしようか」。
この時に、木々高太郎が、「推理小説」を提案。木々高太郎は、林 髞の筆名。林 髞は、優れた大脳生理学者だった人物。
この「雄鶏社」で、一時、編集者だったのが、向田邦子。『映画ストーリー』の編集者だったのですね。
推理小説のひとつに、「倒叙法」があります。まずはじめに犯人が分かっていて、そのアリバイを崩してゆく進め方。たとえば、TVの「刑事コロンボ」もまた、倒叙法でしたね。
この倒叙法を得意とした作家に、F・W・クロフツがいます。フリーマン・ウィルス・クロフツは、1879年、アイルランドのダブリンに生まれています。
クロフツが1935年に発表したミステリに、『ギルフォードの犯罪』があります。この中に。

「蝶ネクタイはきっちりと左右対称に結ばれており、靴にかぶせた、まぶしいまでに白いほこりよけのスパッツは、まるで体の一部のようにぴたっときまっていたし…………………。」

これは、ラルフ・オセンデン卿の着こなし。
スパッツ sp ats は、靴の甲に掛ける短脚絆のこと。1930年代までは、英國紳士の象徴でもあったものです。
もともとは、スパッターダッシーズで、靴への泥除けとしての必需品だった。それが時代とともに省略されて「スパッツ」となり、1910年代以降は完全に装飾品となったものです。
時にはスパッツを掛けて、推理小説を探しに行くとしましょうか。

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