ヴェテランとヴェルヴェティーン

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ヴェテランは、老練者のことですよね。たとえば靴なら靴について、長い経験を持ち、あらゆる事に通じている人の場合、「ヴェテラン」と呼ばれるのでしょう。
それはそうなんですが。ヴェテランには、「古参兵」の日本語がふさわしい。あるいは
「老練兵」だとか。なぜなら、「ヴェテラン」 v et er an は、軍隊用語からはじまったらしいので。
英語のヴェテランは、ラテン語の「ヴェテラヌス」から来ているとのこと。「年を経た」の意味の。1509年頃からの英語らしいのですが、主に軍人を指しての言葉であったという。いや、今現在でもイギリス英語では、やはり「ヴェテラン」には軍関係の匂いがあるとのこと。
それに較べれば、アメリカ英語のほうが、「ヴェテラン」と言った時の幅は広いらしい。ちょうど日本での「ヴェテラン」がそうであるように。
短篇小説のヴェテランに、芥川龍之介がいます。芥川龍之介はけっして長いとはいえない人生の中で、数多くの名短篇を生んでいます。
その芥川龍之介が大正十三年から大正十四年にかけて。リーダーを編んでいるのですね。
当時の旧制高校の生徒のために、英語の副読本を選んでいるのであります。
これは名案ではないでしょうか。今の時代でもたとえば村上春樹が英語の副読本を選んでみれば、生徒はよりいっそうの興味を持つはずでありましょう。
芥川龍之介が選んだ副読本は、ぜんぶで五十一篇。オスカー・ワイルドや、エドガー・アラン・ポオ、ダンセニイなども、もちろん選ばれています。
そんな中のひとつに。『不老不死の霊薬』がありまして。アーノルド・ベネットの小説。この中に。

「 「ペルーのインカ族」 は、黒の綿ビロードに身を包み、首には色鮮やかなスカーフを巻き、天幕の前に立っていた。」

「ペルーのインカ族」は、店の名前であり、また店主のことでもあるのでしょうね。
「黒の綿ビロード」。これはいうまでもなく、コットン・ヴェルヴェット。すなわち、
ヴェルヴェティーン v e lv et e en に外なりません。絹で織ったものが、ヴェルヴェット。
綿で織ったものが、ヴェルヴェティーン。 
この「ヴェルヴェティーン」にももうひとつの意味があって、「猟場番人」。昔猟場番人がよく綿ビロードの服を着ていたので。
どなたか白のヴェルヴェティーンで、スーツを仕立てて頂けませんでしょうか。

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