オシェトラとオフィサーズ

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オシェトラは、キャヴィアのひとつですよね。osc i etr a と書いて、「オシェトラ」と訓むんだそうですが。
キャヴィアはもちろんチョウザメの卵。その粒の大きさによって、「ベルーガ」があり、
「オシェトラ」があり、「セヴルーガ」があるんだそうですね。これは粒の大きい順に並べられています。つまり「オシェトラ」は、中間くらいの大きさということになるわけですね。

「スープはポタージュ、犢の骨つき、キャビアのオルドヴル。満腹した。一時楽屋入りする。」

古川ロッパ著『昭和日記』昭和十一年のところに、そのように出ています。1月19日、
日曜日。名古屋の「アラスカ」で。
古川ロッパは、「キャビアのオルドヴル」と書いているのですが。
昭和十八年に、岡本かの子が発表した小説に、『女體開顕』があります。岡本かの子は昭和十四年に、世を去っています。『女體開顕』は、未完の遺作ということになります。
『女體開顕』の時代背景は、明治三十年に置かれていて。十二歳の奈々子が物語る小説になっているのすが。未完とは言いながら長篇で、岡本かの子の代表作といえるものでありましょう。この中に。

「キャビヤの罐が届いたので、珍しいかも知れないと………」。

そんな科白が出てきます。これは、西洋料理店「七丘亭」の若主人の言葉として。
岡本かの子は、「キャビヤ」と書いているのですが。明治三十年の「キャビヤ」。それはたしかに「珍しい」ものに違いありません。
少なくとも日本の小説にあらわれる「キャビヤ」としては、かなりはやい例かと思われます。
キャヴィアが出てくる小説に、『ストーリーテラー』があります。1991年に、アレクサンドル・カバコフが発表した物語。

「………ティースプーンですくい取ったキャビアをパンの極小片に塗りたくり、出来上がった構造物をパッと口の中に放り込むと…………………」。

これはある男がキャヴィアを食べている場面。舞台はモスクワですから、キャヴィアが出てくるのも、当然なんでしょう。
また、『ストーリーテラー』には、こんな描写も出てきます。

「………まだパリにいた頃、クリニャンクールののみの市で買った古いイギリス軍のズボンが……………………。」

「イギリス軍のズボン」。これはたぶん、「オフィサーズ・トラウザーズ」ではないかと思われます。私の同じ時期に同じようなことをしていましたので。
パリの古着屋に、イギリス将校の軍用パンツが放出品として、並べられていたのです。
それは極厚の紡毛地で、ボタン・フロント、ハイ・ライズのスタイルだったことを、記憶しています。とにかく厚い生地なので、日本の冬には快適でありました。
どなたか1940年代の、オフィサーズ・トラウザーズを再現して頂けませんでしょうか。

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