シルヴァー・フィズと真珠

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シルヴァー・フィズは、カクテルのひとつですよね。
シルヴァー・フィズは、ジンに卵白を加えたカクテルなんだそうです。これの少々、砂糖とレモンとを加えて。言葉としては、1901年頃から使われているんだそうですが。
ジンはカクテルには欠かせないものでしょう。ジンをベースにしたカクテルは、星の数ほどあるに違いありません。
ジンにホワイト・キュラソーを加えると、「ホワイト・レディー」になるんだとか。ホワイト・レディーは、1920年代に、倫敦、サヴォイ・ホテルのバアで、ハリイ・クラドックが考案したとの説もあるようですが。
キュラソーはリキュールですから、そのままで飲めないわけでもありません。
よく知られているホワイト・キュラソーの銘柄には、「コアントロー」があります。もちろんゆたかなオレンジの薫りに満ちて。
また、オレンジ・キュラソーでは、「グラン・マニエル」でしょうか。その薫りといい、アルコール度数といい、女性向きと考えるむきもあるようですが。
キュラソーがお好きだったのが、太宰 治。

「小さい盃でチビチビ飲むのにさえ大いなる難儀を覚え、キュラソオ、ペパーミント、ポオトワインなどのグラスを気取った手つきで口もとへ持って行って、少しくなめるという種族の男で……………………。」

太宰 治は、『酒の追憶』と題する随筆に、そのように書いています。
深刻な顔つきの、和服姿の太宰が、「キュラソオ」を。ちょっと想像しにくいのでありますが。
シルヴァー・フィズが出てくる小説に、『ガラスの鍵』があります。
1931年に、ダシール・ハメットが発表した名作。

「すんだわ。」女は、目を上げずにこたえた。「シルヴァ・フィズをちょうだい。」

これは主人公の、ネド・ボウモンが、リーという女性とレストランで会う場面。ネド・ボウモンのほうは食事がまだなので、マッシュルームを添えたミニッツ・ステーキを注文する。飲物は、コーヒー。
また、『ガラスの鍵』には、こんな描写も。

「ワイシャツの胸の濃い色の真珠が、暖炉の火に映えて、身うごきにつれて、またたく赤い眼のように光つた。」

もちろんこれも、ネド・ボウモンの着こなし。真珠のドレス・スタッドを挿しているのでしょう。
パールのスタッド。むろん、シルヴァー・フィズを飲む時にも、ふさわしいものでしょうね。

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