紋章とモアレ

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紋章は、バッジのことですよね。「紋所」でもあります。家紋もまた、紋章のひとつでしょう。
ひとつの例ではありますが、「葵」の御紋。これはもちろん徳川家の紋章であります。
日本にも家紋を着物に入れる習慣があるのは、言うまでもないでしょう。
家紋。ここから場合によっては、家柄の誇りを表すこともあります。
昭和九年に、横光利一が発表した小説に、『紋章』があるのは、ご存じの通り。

「私は記者にアンチョビーと話しましたが、これは調味料が魚の液化とどこも變つてゐるものとは思へなかったからであります。」

これは物語の主人公「雁金」の発言として。
雁金は一種の調味料を発明して、それを輸出しようと考えている人物。
家柄にかけても、なんとか成功させたいものと。それで、『紋章』なのでしょう。
『紋章』は、昭和九年『改造』新年号に掲載された長篇。横光利一の『家紋』は好評で。昭和十五年には、『續家紋』が刊行されています。

紋章が出てくるミステリに、『ミッション・ソング』があります。2006年に、ジョン・ル・カレが発表した物語。

「ブレザーの紋章が輝かしくそれを物語っている。」

これはある警察官の着ているブレイザーについて。つまり、一流校の出身だろうと、推測している場面。
また、『ミッション・ソング』には、こんな描写も出てきます。

「フィリップはグレーのスーツに白い綿のシャツ、波紋のある赤いシルクのネクタイという格好で………」

「フィリップ」は、謎のコンサルタントと設定されているのですが。
ここでの「波紋のある赤いシルク」。これは、「モアレ」moire のことかと思われます。
波目、または木目模様の絹地のこと。女性のイヴニング・ドレスなどにも用いられる素材です。上品で、優雅な布地と言えるでしょう。
どなたかモアレのディナー・ジャケットを仕立てて頂けませんでしょうか。

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