白ワインとプラストロン

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白ワインは、いいものですね。フランスでは、「ヴァン・ブラン」となるんだそうですが。
白ワインが目の前にある時は、「白ワインこそ最上」と言い。赤ワインが目の前にある時は、「赤ワインこそ最上」と言う。私はそんな人間でありたいものです。
白ワインがお好きだったお方に、ロンサールがいます。ピエール・ド・ロンサール。十六世紀、フランスの詩人。

絶妙な甘口の薔薇色の葡萄酒
アンジューの産
バッカスよ おまえの液体を護れ
俺は深い愛情を
おまえにたいして抱くから
おまえの酒はいつも心にかけているよ

『馬鹿騒ぎバッカス』の中で、そんな風に詠んでいます。 ここから想像いたしますと。ロンサールはアンジューの白ワインがお好きだったのでしょうか。たぶん、十六世紀に、すでにアンジューのワインは広く知られていたものと思われます。
アンジューの白ワインが出てくる小説に、『シェリーの最後』があります。1926年に、コレットが発表した物語。かの名作、『シェリー』の続篇ですね。

「カール=ド=ショーム〔 アンジュー地方の高級白ワイン 〕のふたつの樽をレアに送ってやって損した、自分にとっておけばよかったって、そういったでしょうが…………」。

これは、 シセルロットが、シェリーに対して言う科白なんですが。 それはともかく。二本の壜ではなくて、「ふたつの樽」というところが、羨ましいではありませんか。また、こんな場面も。

「ここから見えるあなたって、白いプラストロンと白い顏だけが真っ暗闇に宙吊りになっているの…………」。

「プラストロン」は、いわゆる「イカ胸」のこと。正式の場で着るドレス・シャツは、胸の部分が硬く仕上げることになっています。あの硬い部分を、「プラストロン」。
時には、正装の快感を味わってみたいものですね。

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