辻とティロリアン・ハット

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辻という言葉がありますよね。辻の言葉も、さぞかし古いんでしょう。今の言いかたなら、交差点でしょうか。
「辻」は象形文字のようでもあって。まず、「+」の字があります。もちろん道と道とが重なっている様子なんでしょう。この「+」の形をした道を人々が行き交うので、「辶」が添えられて、「辻」の文字が生まれたものと思われます。実に理解しやすい文字であります。
辻を含む地名は、日本全国にありそうです。たとえば、高辻。高辻は愛知県にもあり、京都にもあります。では、どうして「高辻」なのか。さあ。もしかすればその昔、札が掲げられていたのかも。
辻は人が多く通る所、なにかの説明を掲げるにも、ふさわしい場所だったのでしょう。今も港区にあるのが、「札の辻」。江戸期の札の辻はお江戸の入口だったとか。おそらくそれを示す「札」が掲げられたいたのでしょう。だから、札の辻。
高辻はなにも地名だけでなく、人の姓にもあるようですね。高辻の近くに住んでいたから、「高辻」の名前になったのでしょうか。
あるいはまた、「辻」というお方もいるようです。たとえば、辻 邦生。辻 邦生の愛読者も少なくはないでしょう。辻 邦生は異国小説を多く書いた作家でもあります。
物語の背景は異国で、登場人物もまた異国人。そんな辻 邦生の小説を読んでいると、時に翻訳物を開いている錯覚におそわれることがあるほど。ひと言でいって「おしゃれな物語」になっています。ひとつの例を挙げるなら、『グラスゴウ ガラスの帽子と赤い薔薇』。この中に。

「ある夜明け、ハンスは登山帽に羊皮の上着、茶色のニッカーボッカー重い登山靴…………」。

ここからある美しい物語がはじまるのですが。それはともかく。ここでの「登山帽」は、ティロリアン・ハットではなかったでしょうか。もちろん私の勝手な想像なのですが。
ティロリアン・ハットはその名の通り、ティロル地方の民族帽子からはじまっています。もともとはつばの広い帽子だったという。
一度、素晴らしいティロリアン・ハットをかぶって、札の辻を散歩してみたいものですが。

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