カウンターとカウズ

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カウンターは、よく使う言葉ですよね。バアのカウンターだとか。
カウンターは、c o unt erで、もともとは「数を数える場所」だったのでしょうか。
カウンターの出てくる物語に、『あめりか物語』があります。永井荷風が明治の後半に書いた物語。『あめりか物語』は、小説のようでもあり、随筆のようでもあり、やはり「物語」とするのがいちばん近いのかも知れませんが。

「自分は突と戸を押して這入ると、カウンターに身を寄せながら…………。」

これは明治三十九年頃。ニューヨークの酒場に荷風が足を踏み入れる場面。「カウンター」が出てくるわりあい早い例かも知れませんね。
荷風は、「突と」と書いて、「つと」と訓ませています。冬の夜、12時をまわっている頃。このバアだけは開いていたので。それも上品なバアではなくて。水兵や労働者が多い店。まあ、荷風も研究熱心だったお方なんですねえ。
やはりカウンターが出てくる小説に、『失われた時を求めて』があります。もちろん、マルセル・プルーストの代表作。十九世紀末の巴里が背景になっています。

「私たちが注目に行くとカウンター上の釣鐘型のガラス容器からボンボンをひとつ取り出して………………」。

これは巴里の「グワッシュ」という菓子屋での、ちょっとしたおまけのこと。また、『失われた時を求めて』には、こんな描写も出てきます。

「なんてすてきなんでしょう、カウズのレガッタに行けるなんて!」

カウズは、英國の避暑地。ボートレースなどが盛んな港町でもあります。
今のディナー・ジャケットはその昔、「カウズ」と呼ばれたことがあるんだとか。英國皇太子が、カウズに泊めた王室ヨットの中で食事するのに、ふさわしい略装と考えたために。

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