ピケとピー・ジャケット

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ピケは、生地の名前ですよね。縦に畝のある生地。多くは木綿ですから、コットン・ピケということになります。piqué。もともとはフランス生まれの織物なのでしょう。フランス語の「ピケ」には「刺す」の意味もあるらしい。そこから「刺し子」の意味も生まれたのかと思われます。
今、ピケがもっともたくさん使われるのは、帽子。幼稚園生のかぶっている白い帽子は、まず例外なくピケであります。ただし、ピケは必ずしも帽子専用の布地ではありません。

「紺のピケのツウピースを、白いシャツブラウスに着更て卓袱台の前に出てきた。」

佐多稲子が、1953年に書いた『燃ゆる限り』にも、そのように出ています。これは、昭子という女性の、自宅での様子。「ピケのツウピース」が外出着、「シャツブラウス」は普段着という設定なのでしょう。
しかし、ピケにはもうひとつの意味があります。「ピケッティング」を略しての、ピケ。よく、「ピケを張る」なんていうではありませんか。ピケッティングのピケが出てくる小説に、『北緯四十一度』があります。『北緯四十一度』は、ジョン・ドス・パソスが、1930年に発表した物語。

「午前中に組合のピケはミシガン大通りワシントン街の消防署に向う途中の………………。」

ここでの「ピケ」は、ピケッティングのピケに他なりません。また、『北緯四十一度』には、こんな描写も。

「青い厚ラシャ・ジャケットのポケットに、片手を深くつっこみながら…………………。」

これは、ある雪の日の、ジョーという男の様子。「青い厚ラシャ・ジャケット」だけではなんとも申せませんが。たぶん、ピー・ジャケットなのでしょう。
男が、堂々と手をポケットに入れて良いのは、ピー・ジャケットくらいのものですから。

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