広東料理とカシミア

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広東料理は、美味しいものですよね。中国の、広東地方の料理なので、広東料理。
中国はまことに広いお国で、それぞれの地域によってそれぞれの料理が。北京料理もあれば、四川料理もあり、湖南料理、福建料理……………………。
そして、「食は広州に在り」と古くから言われる通り、あまたの中華料理の中でもことに、美食家が好む料理となっています。とても分かりやすい例ですが、仔豚の丸焼き。あれなんかも広東料理の代表なんだそうですね。
陳 舜臣は、『国際化された料理』という随筆の中に、こんなことを書いています。

「清代の首都北京でも、広東料理の店がすくなくなかった。なかでも、「奇園」と「月波楼」という店は有名であった。」

「北京でも」ということは、かなり早い時代から、中国全土で広東料理が評価されていたことを、想わせるではありませんか。
広東料理にもまた種類があって。客家料理もそのひとつ。潮州料理も、順徳料理も、広くは広東料理なんだそうです。
明治期に「広東料理」の言い方があったのかどうか。さあ。ただ、「中華料理」と言ったのは間違いありません。
小栗風葉が明治三十九年に発表した『青春』にも、「中華料理」は出てきます。「西洋料理にも飽きたから、中華料理を食いに行くか」。そんな科白が出てきます。
明治三十九年頃に、「西洋料理に飽きた」とは、ずいぶんなハイカラぶり。いや、はっきり申して、見栄というものであったでしょう。小栗風葉の『青春』には、こんな風にも書かれています。

「絹裏のさやかな裾捌と、池を来る夜風にカシミアの袴の飜はズボンをなぶって………………………。」

明治三十九年の、「カシミア」は比較的はやい一例かと思われます。
せめてカシミアのスェーターで、広東料理を食べに行くとしましょうか。

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