パンとパナマ帽

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パンは、美味しいものですよね。ひと口にパンと言いましても、実にたくさんの種類があります。それこそ星の数ほどに。
でも、基本はパンにバターでしょうか。そういえば、「ブレッド・アンド・バター」の表現もあって。これは、「生活」の意味になるんだとか。パンにバターを挟めば、なんとか暮してゆける、ということなんでしょうか。
そうかと思えば、バターはもちろん、ハムやチーズ、レタス、トマト、あれやこれやを挟むことだってあります。

「パリのカルチェラタンではこうして膨れ上がったバゲットのサンドウイッチが堂々と店先に並べられていた。それを一本買うだけでわたしには充分に贅沢な昼食となった。」

四方田犬彦は、『ひと皿の記憶 ー 食神 世界をめぐる』の中に、そんなふうに書いています。
巴里の、バゲットの、サンドウイッチ。あれだけは世界に冠たるものでしょう。パンが美味いのか、バターが美味いのか、フロマージュが美味いのか。
パンから誰もが想うものに、O・ヘンリーがいます。O・ヘンリーには『魔女のパン』の短篇がありますから。原題も、『ウイッチーズ・ロウヴズ』となっています。O・ヘンリーが1910年頃に書いた物語。

「彼はいつでも売れ残りの古パンをふたつ買っていく。焼きたてのパンはひとつ五セントで、古パンはふたつで五セントだ。」

まずは、そんなあたりから物語がはじまって。最後に、O・ヘンリーならではのどんでん返しが待っているのですが。
パンが出てくる小説に、『船出』があります。ヴァージニア・ウルフが、1915年に発表した長篇。

「食卓はりんごやパンや卵で賑やかだった。ウィロビーにバターの皿を手渡しながら、ヘレンはまじまじと彼を見て思った。「そしてあの人はあなたと結婚し、幸せだったんでしょうね、きっと」

もちろん船上での朝食の様子なんですね。また、『船出』には、こんな描写も。

「一隊は、婦人方の白い日傘と紳士方のパナマ帽の房で飾られ…………………。」

1910年代の英國紳士にとって、パナマ帽が不可欠であったことがよく分かるでしょう。
さて、パナマ帽をかぶって、美味しいパンを探しに行くとしましょうか。

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