パントマイムとバ

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パントマイムってありますよね。身ぶり手ぶりだけで相手に何かを伝える時などに。
「パントマイム」と「マイム」は、また別のものという説があります。イギリスで「パントマイム」というと、れっきとした演劇のこと。やや大衆的な、ユウモアたっぷりの劇。ふつうは男装の女性と、女装の男性とによって演じられる。英国での「パントマイム」の歴史は古く、中世、イタリアの、コンメディア・デラルッテの流れを受けたものだと、考えられています。
私たちが、パントマイムと呼んでいるものをイギリス人は、「マイム」というんだそうですね。
パントマイムが出てくる小説に、『秋のめざめ』があります。円地文子が、昭和三十二年に発表した物語。

「麻枝は品川駅でのパントマイムを話して聞かせた。」

円地文子は、国文学者、上田萬年のお嬢様。
ちょうど円地文子が、『秋のめざめ』を書いていたころ。歌舞伎座で、偶然、そのころ売出し中の、有吉佐和子と出会って。まわりに人がいないので、有吉佐和子は、自己紹介。「有吉佐和子でございます。」これに対する円地文子のひと言。
「私、貴方の小説嫌いよ。」
では、有吉佐和子はなんと返したか。
「ああ、そうでしょう、先生は『地唄』の方がお好きでしょう。」
『地唄』は、有吉佐和子の自信作。
これは、冨家素子著『母・円地文子』に出ている話なんですが。冨家素子は、円地文子の娘。
また、別の会合で、円地文子と有吉佐和子が会って。その時、有吉佐和子は凝った鱗模様の長襦袢を着ていた。
「厄年避けに作ったんですよ」と、有吉佐和子。有吉佐和子と、冨家素子はそれほど歳が離れていない。そこで、円地文子。
「あら、いいわね。うちの娘にも作ってやろうかしら………」そのときの、有吉佐和子。

「あら、先生。これお高いんですのよ。」

これも『母・円地文子』に出ているんですが。
パントマイムが出てくる小説に、『赤い橋の殺人』があります。フランスの作家、バルバラが、1855年に発表したミステリ。

「マックスは、ロドルフのパントマイムの意味を完璧に理解していた。」

また、『赤い橋の殺人』には、こんな描写も。

「この男にはバ・ド・レーヌならぬ、それよりもっと多くの硬貨の入る………………………」。

これは、ロドルフという男に対する言葉。当時のフランスでは、よく靴下の中に、へそくりを隠しておいたので。
フランスでの「バ」 b as は、「長靴下」のことです。
長靴下をパントマイムで相手に伝えるには、どんなふうにすればいいのでしょうか。

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