ベッドとベネット

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ベッドは、寝台のことですよね。寝るための台だから、寝台。今では時代とともにベッドも進化いたしまして。ボタンひとつで位置が変えられるんだとか。
ベッドの位置が自在なら、睡る以外にも、たいていのことができそうですね。
風変りなベッドといえば、ベルナールのそれでしょうか。十九世紀末の、フランスの名優。サラ・ベルナール。美貌の女優、美声の女優。英國皇太子もぞっこんだったほどの名優であります。
ある日、突然、思いついて、棺を註文。薔薇の古木を材に、黄金の蓋だったという。サラ・ベルナールはこの絢爛たる棺がお気に召して、ベッドに。ベルナールにとっては棺の中がもっとも安眠できる場所だったのでしょうか。
ところで、夏目漱石はベッドを使ったのか、使わなかったのか。自宅では蒲団、病院では寝台。まあ、当たり前でしょうが。

「余は白い寝床の上に寝ては、自分と病院と来たるべき春とを斯くの如く一所に……………………。」

漱石は明治四十四年に書いた『思ひ出し事など』に、そのように書いています。これは入院中ですから、当然でしょうね。もっとも漱石には英國留学の経験がありますから、ベッドには慣れていたに違いありません。
ベッドが出てくる小説に、『東京の人』があります。昭和三十年に、川端康成が発表した物語。

「朝子たちの部屋は、低いベツドが向ひ合つて、窓ぎはの卓には、ピンクの笠のスタンドや………………………」。

また、『東京の人』には時計の話が多く出てくるのですが。

「サア・ジヨン・ベンネツトは、ジヨオジ五世の時計師で、サアの位をもらつたの。…………………。」

ジョン・ベネット J oh n B enn ett は、1897年に世を去った英國の時計師。
少なくとも川端康成は「ベネット」の時計のあることを、ご存じだったのでしょうね。

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