シャルルとジャケット

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シャルルは、わりあいとよく耳にする名前ですよね。シャルル・ボワイエだとか。シャルル・アズナヴールだとか。
ドイツなら、「カール」でしょうか。イギリスなら、「チャールズ」に近いおかも知れませんね。チャールズ・ディケンズは、英國の誇る文豪です。チャールズ・ディケンズに匹敵するフランスの大詩人に、シャルル・ボオドレエルがいます。
シャルル・ボオドレエルの代表作に、『悪の華』が。1857年に出版されています。『悪の華』は、何度かお目通しのことでしょう。『悪の華』から近代詩がはじまると言って。過言ではありません。
シャルル・ボオドレエルは大詩人であると同時に、ダンディでもあった人物。
1841年の仕立屋のボオドレエルへの勘定書を見る限り、一着のジレが、四十フランだったという。1840年代の、巴里での一般のジレはだいたい15フランくらいだったらしいのですが。
ボオドレエルは、その四十フランのジレを一度に三枚、仕立させています。そんなわけで、洋服屋はボオドレエルに、千フラン近い勘定書を送ってもいます。
四十フランのジレだけでは、なんとも言えませんが。ボオドレエルの随筆を丹念に読むと、大詩人がいかにダンディスムに傾倒していたかが、よく伝わってきます。
シャルルが出てくる小説に、『生きている過去』があります。1905年に、アンリ・ド・レニエが書いた物語。

「シャルル・ロオヴローは、一瞬足を止めた。」

『生きている過去』は、このようにして、幕を開けるのですね。また、『生きている過去』には、こんな描写も出てきます。

「ド・ジェルシ氏は、ブロー氏のモーニング・コートの折返しを引張っていた。」

「折返し」は、もちろん襟のことでしょう。以前には、よくこんな仕種があったらしい。しばし相手を引きとめておく方法として。
モーニング・コートはフランスで、「ジャケット」 j aq u ett e と言います。
時にはモーニング・コートを着て。ボオドレエルの初版本を探しに参りましょうか。

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