プルンとファー

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プルンで、名画でといえば、『プルンのモザイク』でしょうね。1931年に、パウル・クレーが描いた絵画。今は、「新潟美術館」所蔵となっています。
パウル・クレーに限ったことではないでしょうが。『プルンのモザイク』は思考を拒否するところがあります。「いったいこの絵は何を描こうとしたのか?」なんて考えても無意味なのです。
『プルンのモザイク』に向って、ただ心を開くこと。その開いた心から入ってくる「何か」を感じ、味わうに限ります。
『プルンのモザイク』に限らず、パウル・クレーを偏愛した作家が、吉行淳之助。ご本人がご自身で、「偏愛」とおっしゃっているのですから、間違いありませんね。
なにしろ1964年に、『砂の上の植物群』を発表しているくらいなんですから。これがもともとパウル・クレーの絵の題名であるのは、いうまでもありません。
小説『砂の上の植物群』は、その後、「日活」で映画化。仲谷 昇、小池朝雄、信 欣三をはじめ、いずれ藝達者がそれぞれの役を演じています。つまり『砂の上の植物群』は、映画にしたいほどの、名作だったわけですね。

「砂の上の植物群」という題名は、クレーの絵の題から借用した。因みに、私の心の中でクレーの絵とドビュッシイの音楽とは、同じ場所にある。変な言い方だが、クレーの絵を翻訳して音楽に変えれば、ドビュッシイになる。

吉行淳之助著『私の文学放浪』の中に、そのように書いています。
昭和五十八年「文藝春秋」二月号に発表した掌篇小説に、『謎』があって、お読みになった方も多いでしょう。この中に。

「豹の毛皮をきた女なんて、いくらもいるぜ」

部屋の中で、男ふたりが、外を見下ろしながら会話している場面。ほとんどそれに終始する「謎」めいた物語になっています。
たぶん豹のファー・コートなんでしょう。豹であろうとなかろうと、ファー・コートを着ている男はそれほど多くはないでしょう。でも、冬の新潟に行くには、ファー・コートくらい欲しくなってしまいますが。

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