タッサーとタックス

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タッサーは、絹織物のひとつですよね。やや太い畝織地。女性のドレスの生地などにもよく使われるものです。正しくは、「タッサー・シルク」と呼ぶんだそうです。タッサーはもともと、「野の蚕」のこと。野の蚕の糸で織った生地なので、「タッサー・シルク。つまり本来のタッサー・シルクは、野蚕糸を用いたところに特徴があったらしい。
タッサー t uss ah は、インド、ヒンディー語の「タサー」t as ar から来ているとのこと。「タサー」は、「太い、茶の絹」の意味であったという。いずれにしても今日のタッサーは、古い時代のインドに源があるのでしょう。
タッサーは一例ですが。ちょっとおしゃれなディナー・ジャケットには、絹織物で仕立てるのもひとつの方法ではないでしょうか。
ディナー・ジャケットはイギリス的な言い方で、アメリカでは「タクシード」t ux ed o ということが多いようです。フランスをはじめヨオロッパでは、「スモーキング 」が一般的でしょう。
アメリカでの「タクシード」は、1889年『サルトリアル・アート・ジャーナル』8月号に紹介されている例が、比較的はやいものかと思われます。

「低いロール・カラーで、拝絹つきの上着は、カウズ・コートとか、タクシード・コートとか、ドレス・サックなどの名前で呼ばれるものである。」

そんなふうに説明されています。1889年には、「タクシード・コート」の呼び方もあったようですね。
「カウズ・コート」は、英國の港町の名前に由来するもの。当時の英國皇太子が、カウズに停泊している王室専用ヨットでの晩餐に着用したものと、考えられているので。当時の英國皇太子とは、後のエドワード七世であります。
タクシードそのものの誕生は、1886年10月10日のことであったわけですから、1889年の「タクシード・コート」は、まだ初期のことであったのでしょう。
アメリカでしか使われない表現に、「タックス」 t ux があります。tを省略して、「タックス」。これは税金のタックスにも音が通じるので、いろんな冗談のネタにもなっているようですが。

「皆さんと同じように、私もまた値の張るタックスを着用しています。」

シンクレア・ルイスが、1922年に発表した『バビット』に、そんな一節が出てきます。
小説にあらわれた「タックス」としては、これが最初ではないかと考えられています。
それにしても、タッサーのタックス、一度着てみたいものですね。

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