ヴァンとヴァン・ダイク

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ヴァンは、ワインのことですよね。v in と書いて、「ヴァン」と訓むんだそうですが。
これがイタリアなら、「ヴィーノ」 v in o でしょうか。
ワインは英語、葡萄酒は日本語。ただしもっと古い時代には、「珍陀」の呼び名があったらしい。珍陀と書いて、「ちんた」。これは赤ワインのことでありました。
もともとはオランダ語に、「ヴィーノ・ティント」。色のついた葡萄酒の意味から来ているんだとか。ということは日本での最初のワインは、オランダ渡りだったのでしょうか。
ワインが出てくる小説に、『當世書生氣質』があります。坪内逍遥が、明治十八年に発表した物語。ただし、時代背景は、明治十五年頃の風俗が描かれているんだとか。
『當世書生氣質』は戯れ文の様でもありますが。明治十五年頃の若者の風俗を知る上では、貴重な資料とも言えるでしょう。

「はじめは知音になりたいとか、ヤレ奇遇だとかなんだとかいつて、無闇に酒ばかし強つけてゐたが……………………。」

文中の「酒」の横には、「ワイン」のルビがふってあります。
日本の小説の中での「ワイン」としては、かなり早いものかと思われます。

「………獺虎の帽子、黒七子の紋付羽織は、少々柔弱すぎた粧服なり。」

これはほんの一例で、明治十五年頃の「書生」が、どのような着こなしであったかが、よく分かるものです。
ドイツ・ワインが出てくる小説に、『片戀』があります。この『片戀』は、ツルゲーネフの原作を、明治二十九年に、二葉亭四迷が翻訳したものなのですが。

「ラインワインを一壜取寄せて、それをガギンと二人して悠々と飲合ひました。」

また、『片戀』には、こんな描写も出てきます。

「ガギンは圓形の、V an Dyck 風の帽子を冠つて、ブルーザを着て……………………。」

「ガギン」は、絵師という設定になっているのですが。
「ヴァン・ダイク・ハット」は、オープン・クラウン、ワイド・ブリムの帽子のことです。
1635年頃、ヴァン・ダイクが描いた、英國王、チャールズ一世の肖像画にも、このような帽子が描かれています。
どなたか十七世紀式の、ヴァン・ダイク・ハットを仕上げて頂けませんでしょうか。

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