エンサイクロペディアとエル

Share on FacebookTweet about this on TwitterShare on Google+Email this to someone

エンサイクロペディアは、百科事典のことですよね。百科辞典ともいいます。
百科辞典と、百科事典はどう違うのか。主に言葉の説明の力を置いたのが、「百科辞典」。
一方、事柄の解説を中心としたのが、「百科事典」なんだそうですね。
以前は「百科全書」とも呼んだそうですが、今ではあまり一般的ではありません。
とにかく「百科事典」というのですから、森羅万象、あらゆる物事について教えてくれるのですから、重宝この上もなしでしょう。
百科事典は健康にもよろしいというのが、私の迷論であります。
百科事典は一冊でも、重い。というよりも、これも迷論でしょうが、百科事典は重いのが良質。「百科事典は重さで買え」とさえ思っています。
まず、第一に、百科事典を置いてある所に足を運ばなくてはなりません。次に、目的の言葉が出ている巻を取り出して。然るべき場所に持って行く。重い。腕の運動になります。どうかすると鉄亜鈴よりも重いんですからね。
そんなわけで百科事典は健康に効果があります。

近代の百科事典は、十八世紀のスコットランドにはじまっています。1768年12月のことです。ロンドンではなくて、エディンバラに於いて。
これはほんの一例で、当時のエディンバラの文化度はかなりの高さに届いていたのです。
もちろん『エンサイクロペディア・ブリタニカ』の最初なのであります。
編集は、スコットランド人の、C・マクファークワーでありました。これは「分冊方式」で、1768年12月に最初の二冊が出されて、1771年に一応の完成。三冊本で、総頁は、2、760頁だってと伝えられています。
この時の『エンサイクロペディア・ブリタニカ』が画期的だったのは、アルファベット順の項目になっていたことでありましょう。
『エンサイクロペディア・ブリタニカの第二版が出たのが、1874年。十冊本でありました。
1842年の第七版では、二十一巻本になっています。
1889年には、第九版が、二十四巻本とした刊行されているのですが。この第九版の、
『エンサイクロペディア・ブリタニカ』を日本で扱ったのが、「丸善」。明治三十五年のことです。
この時、「丸善」が名づけたのが、『大英百科全書』でありました。
1929年には、第十四版の『エンサイクロペディア・ブリタニカ』が、二十三巻本として発行されています。十三版までには、「コスメティック」の項目は見当たりません。が、十四版では、「コスメティック」の詳しい説明が出ているのです。

「………エンサイクロピヂヤ[ 百科通覧] の中から。政事に關する事と農工業に關する事を。抜粋して譯するんさ。」

明治十九年に、坪内逍遥が発表した『當世書生氣質』に、そのような一節が出てきます。
坪内逍遥は、「百科通覧」と訳しています。が、これもおそらくは、『エンサイクロペディア・ブリタニカ』であったと思われます。
ということは坪内逍遥は「丸善」が輸入する前に、英國から取り寄せていたのでしょうか。
少なくとも坪内逍遥が、『エンサイクロペディア・ブリタニカ』の存在を知っていたのは、間違いないでしょう。
明治期の本を読んでいると、「エル」という言葉が出てきます。この「エル」は、ell のことかと思われます。
「エル」ell は昔の長さの単位。インチやセンチより前に、多く用いられた単位。ことに、
生地の長さを測る時には、「エル」が使われたのであります。
単位としての「エル」は、十六世紀以来、英國で用いられているものです。が、これは直接には、フランスから伝えられたと、考えられています。
一エルは、45インチ。これは人間の腕の長さが基準になったもの。肘から中指の先端までの長さが、「一エル」であった、と。
ただし、フランスの「一エル」は、47インチ。スコットランドの「一エル」は、37インチ。
それはともかく昔は生地の長さといえば必ず、「エル」で測ったものであります。
どなたかエルで測った生地でスーツを仕立てて頂けませんでしょうか。

Share on FacebookTweet about this on TwitterShare on Google+Email this to someone