フィッツジェラルドは、人の名前にもありますよね。
たとえば、エラ・フィッツジェラルドだとか。アメリカのジャズ・シンガーであります。
エラ・フィッツジェラルドは1917年4月25日に、ヴァージニア州に生まれています。
ビリー・ヒリディ、サラ・ヴォーン、そしてエラ・フィッツジェラルド。これは二十世紀の三大ジャズ歌手なんだそうですね。
エラ・フィッツジェラルドのよく知られた歌に、『ハウ・ハイ・ザ・ムーン』があるのは、ご存じの通り。
これが録音されたのが、1947年12月20日。「デッカ・レコード」で。
ところが。ジューン・クリスティも同じ年に、『ハウ・ハイ・ザ・ムーン』をレコーディング。12月21日に。「キャピトル・レコード」で。
世の中、偶然のことがあるものですね。
ジャズがお好きだった作家に、色川武大がいます。
色川武大は、「ベイシー」でジャズを聴くのがお好きだった。
「ベイシー」は石川県一関にあるジャズ喫茶。当時の経営者は、菅原昭二。店名の「ベイシー」はたぶん、カウント・ベイシーに因んでいるのでしょう。
色川武大は、一関の「ベイシー」に通って、通って。つには、一関に住いを移したという。1989年の3月に。
フィッツジェラルドで作家ということになりますと、スコット・フィッツジェラルドでしょうね。
『ザ・グレイト・ギャッツビー』は何度も映画化されていますから、たぶんご覧になっていることでしょう。
スコット・フィッツジェラルドは1896年9月24日。ミネソタ州に於いて誕生。エラ・フィッツジェラルドよりも八歳年長だったことになるでしょうか。
スコットがどこかでエラの歌を耳にしている可能性は大いにあります。
エラの歌手としての出発は、1934年のことですからね。
スコット・フィッツジェラルドが1922年に発表した長篇に、『美しく呪われた人たち』があります。この中に。
「アメリカで最初にコートの下襟を丸めた男、おしゃれなユリシーズに関する彼の記憶はもっと鮮明だった。」
これは1910年代の、ヘンリエッタ・レブルーン・パッチという洒落者について。
ここでの「コート」が「上着」であるのは、言うまでもありません。
また、「下襟を丸めた」は、いわゆる「フィッシュ・マウス」のことかと。
上着の上襟は角型。でも、下襟は丸型。これを「フィッシュ・マウス」fish mouth 。一時期、ずいぶん流行ったものですね。
どなたかフィッシュ・マウスの襟のスーツを仕立てて頂けませんでしょうか。